Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

テントにもなる重い衣を着て古墳人になった@泉太郎展

とにかく私は、古墳人になってしまった。
東京オペラシティアートギャラリーで始まった泉太郎さんの展覧会で、まず最初は、ずっしりと重い貫頭衣を着ました。このコスチュームは、アートギャラリーに足を踏み入れた人なら誰でもまとえるように、すべてのロッカーの中に用意されています。
なんと子供用まであるのですよ!

そして、小さな部屋で、生き物なのか精霊なのかわからない何者かがひそひそ声で語る「ルール」を聞いているうちに、意識することなく、マインドが現代人ではなくなっていったのです。「再野生化」という言葉が何回も出てきたけど、その他のことはあまり覚えていません。。。

その後部屋の裏側に回ると、サザエの貝殻が傾いたような基地が向こうの方に見えます。

古代と、人類が滅亡した後の未来がミックスしたような空間を一通り歩きまわり、一旦外へ出て大きな会場へ。

大きな会場は板張りのただ広い場所で、端っこの方にポツポツとものが転がっている感じでよくわからない。。。一番奥まで歩いて行くと、「壁にある素焼きの番号札を渡してください」「番号を呼ばれたら来てください」と謎のインストラクション。

言われた通りにして、案内されたのが、先ほど見たサザエの貝殻のような形をした基地の中。「それではこれからこの棺桶に寝る体験をしてもらいます」と淡々と伝えられる。
「えーっ、かんおけー??」
私はお墓とか、おばけとか、棺桶とかあまり好きではないので、自分から進んでそのような体験はしないのだけど、知らずに来てしまった上に、当たり前のようにどうぞと言われてしまったので、やるしかない!
聞けば、ここは「古墳」だったみたいです。
こじんまりとした台の上に登り、VRの機械をつけて、寝転がると、顔の部分が素焼きの蓋で閉められてしまいます。
美術館でなければ逃げ出したいところ!!!
でもここは頑張ってやってみましたよ。その様子を写真でお伝えします。

寝転ぶとすぐに、空から目だけのフクロウが降ってきました。
ふわふわふわと降りてきて、私の目の近くに来るのもあれば遠いままのものもある。
色々なフクロウがいるみたい。
その光景とリズム感が意外と心地よく、だんだん眠くなってきた。
おっと危ない!ここは棺桶の中!
下手すると本当にこのまま違う世界に行っちゃうよ!笑
「眠りと死は紙一重」とどこかで聞いたことがあるけれど、つくづくそう思う。
夜眠ってそのまま死んじゃったら、眠りの延長みたいで、自分自身は気がつかなそうだし。。。
まあでも、今日はちゃんと起きよう。

パッと起き上がって、外に出ると、信じられないほどキュートな子犬と目が合いました。
古墳から生き返って出てきた古墳人の気分。笑

さて、実は、次に大仕事が待っているのです。
入場する時に着た貫頭衣を使って、テントを作るのです。
そしてこのテントは、またどうやらお墓になるらしい。。。
今日はやたらお墓が出てきます。
先ほど見た、ただっ広い会場には、すでにたくさんの黒いテントが出来上がっていました。

歩き回っていると、作家の泉太郎さんに遭遇。
先ほどの、棺桶体験のことを伝えると。

石舞台古墳と神武天皇陵あるいは旧洞村(共に奈良県)のあたりから発想が始まったとのこと。泉さんは、古墳や天皇陵を観察しているうちに、世の中には、誰でも入れるものすごくオープンな場所と、絶対に誰も入れないクローズドな場所があることに気が付いたそうです。「古墳の中でも、天皇の領域には、誰も入ってはいけない場所がある。。。
実はこのような境界線は、現代社会にも存在している。」
そのようなことを伝えてくれました。
そしてもう一つ重要なことも!
今私がテント(お墓)を作ろうとしている会場では、一定時間が過ぎると、作ったテントが壊されてしまうことになっているのですが、壊されないテントもあるのです。
そして、どのテントが壊されてどのテントが壊されないかには法則があります。
その法則は、テントを作っている人達には知らされません。
「人知の及ばない叡智によって成り立っている世界」の縮図みたいですね。
でも、話の流れで、私はちらっとその法則を聞いてしまいました。
それは会場内に置いてある地図にも関係しています。

そして私は、それがいいのか悪いのかはわかりませんが、壊されない場所にテントを作ることにしました。

作ると言っても、私にとっては生まれて初めての建造物。
どうやって作ったらいいのやら。。。マニュアルもないので分かりません。。。
そこで、会場ですでにテントを作り終わった人に聞いてみました。
最初どうするの?
すると、「あそこから土台を持ってきて、そのポールに今来ている貫頭衣を裏返してかぶせるんですよ」との答え。

なるほど~とやってみると、「そうしたら裾の方を伸ばして、壁際に置いてあるペットボトルを取り付けて重しにします。」と教えてくれます。
へー!
「あっ、ペットボトルは横にして、向きを同じにすると綺麗ですよ」
そうなんだ!
「出来上がったら、テント(お墓)の中に入って丸い窓から顔を出して完成です」
ありがとう!

自分だけで作ったら何時間かかったかわからないけど、経験者から「こうするとよりよい」という情報を随時もらいながら作ったので、ものの5分くらいで完成しました。
古墳人も、きっと手探り状態で衣食住を確保していったはず。
最初に考えついて実行する人は、大変で時間がかかるけど、その次からは、経験者が出てくるので、彼らから色々と有用な情報を集めてより良いものを速く作ることができるようになる。
そんな、人間の助け合いと進化の過程を、本当に古墳時代に放り出されたような状況で体験できました!

私の場合はこんな体験でしたが、 きっと皆さんはそれぞれ全然違った体験ができるはず!
ぜひこの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか!

【開催概要】Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎
    期間        2023年1月18日[水] ─ 3月26日[日]
    会場       東京オペラシティ アートギャラリー  
    開館時間        11:00 ─ 19:00(入場は18:30まで)
    休館日        月曜日、2月12日[日](全館休館日)
    入場料        一般1,200円[1,000円]/大・高生800円[600円]
            中学生以下無料

#東京オペラシティ アートギャラリー   #泉太郎 #taroizumi

【泉太郎 略歴】
1976年 奈良生まれ 現在東京都在住
2002年 多摩美術大学院美術研究科 修士課程修了
主な個展
2022 あへつくり(CAPSULE、東京)
コドクエクスペリメント(Take Ninagawa、東京)
2021 電源(CAPSULE、東京)
2020 ex(ティンゲリー美術館、バーゼル)
コンパクトストラクチャーの夜明け(Take Ninagawa、東京)
とんぼ(Minatomachi POTLUCK BUILDING、愛知)
2019 スロースターター バイ セルフガイダンス(名古屋芸術大学 Art & Design Center、愛知)
2018 My eyes are not in the centre(White Rainbow、ロンドン)
2017 突然の子供(金沢 21 世紀美術館、金沢)
←連絡(Take Ninagawa、東京)
Night Lie(Galerie Georges‒Philippe & Nathalie Vallois、パリ)
Pan(パレ・ド・トーキョー、パリ)
2014 No Night, Day Neither(Nassauischer Kunstverein, ヴィースバーデン(ドイツ))
2011 動かざる森の便利, 不便利(玉川大学、東京)
勇ましいあくび(hiromiyoshii、東京)
2010 こねる(神奈川県民ホールギャラリー、横浜)
くじらのはらわた袋に隠れろ, ネズミ(アサヒ・アートスクエア、東京)

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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