Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

Vol14. 国立新美術館の『19th DOMANI(ドマーニ)・明日展』☆2017年2月5日(日)まで☆

❖『DOMANI・明日展』とは❖

   文化庁が1967年度から実施してきた「新進芸術家海外研修制度(旧・芸術家在外研修)」の成果発表の機会として1998 年から開始した展覧会が『DOMANI・明日展』です。「新進芸術家海外研修制度(旧・芸術家在外研修)」は、将来の日本の芸術界を支える人材育成のため、若手芸術家等が海外の大学や芸術関係機関等で行う研修を支援するもの。
   第 19 回の『DOMANI・明日展』では、国立新美術館の天井高にめぐまれた空間を生かし、海外での研修を終えて比較的時間の浅いフレッシュな作家たち13名が展示しています。絵画、写真、映像、アニメーション、インスタレーション、陶芸、メディア・アートなど多様な素材と表現、そしてヨーロッパや北米、アジアや南半球で磨いてきた独自のアート表現が披露されています。

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  DOMANI展の会場に入るとすぐに感じるのが、グローバル感。世界というか、地球に今存在するアートの最前列がどうなっているのかが見えるような感覚がエキサイティング。言葉で表すと、グローバル フロントライン(地球の最前線)なアートといったところでしょうか。
  ピカソがキュビズムという表現方法を発明した時にように、皆がありとあらゆる素材や手法を試して、表現したい事をどのようにしたら表現できるのかを追求し続けている最先端のパワーが伝わってきて刺激的です。DOMANI展の展示アーティストは皆日本から様々な国に出て研鑽を積んできた方々ですが、展示作品は、日本だとか、行ってきた国だとかの枠を超え、新しいアートの表現を目の前で見せてくれている劇場のようで楽しめます。グローバルアート空間で、普段とは違ったダイナミックなデートを展開してみるのもいいかもしれません。  
 ここからは、ちょうど展示会場でお話を伺うことができたアーティスト達についてレポートします。 

【曽谷朝絵:絵画から空間に開放されたパーツが空間を創る】

 とにかく曽谷朝絵氏の展示空間に着くや否や、飛び込んで行きたくなったのが様々な色彩と形がエネルギッシュに飛び散っているインスタレーション。この中で、伸び伸びと踊り、色や形と共鳴したくなりました。この色や形は「神経のパーツ、細胞のパーツ、空のグラデーションのパーツなどなど」だと語る曽谷さん。これらはどうやら、曽谷さんの絵画から飛び出してきたようです。

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インスタレーション作品≪inside≫の中に佇む曽谷朝絵氏。
 インスタレーション作品の反対側には、絵画作品が展示してあります。インスタレーションの衝撃の後に絵画から感じるのは整然とした静謐感。源は同じ人間の感覚世界の内側ながら、曽谷氏曰く「ぶちまけ混沌の世界と整頓されている世界が呼応して」それがまた空間として作品になっているとのこと。 

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穏やかに光を放つ≪The Light≫

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虹と光の世界≪Airport Eastgate≫
 このように、曽谷氏の呼応する絵画とインスタレーションを同じ空間で体感できる貴重な機会が今回のDOMANI展。絵画に現れる虹の半円が、インスタレーションにも出現しているなど、終わることのない絵画とインスタレーションの呼応を感じることができるのではないでしょうか。
 
「絵画には、人が世界を認識する仕組みを分析し、それを操作するような側面がある。」と語る曽谷氏は、まだまだアートのフロントラインを切り開いてくれそうです!ニューヨークから帰国してご活躍中。 

【保科晶子:粘土に象る時間、記憶、感情】
  否応なしに歩く速度が遅くなり、ジッと見つめてしまったのが保科晶子氏の粘土作品。今あかちゃんが脱いだばかりといった雰囲気の服が柔らかそうなボリュームを保って展示されているからです。温かそうな厚みがあり、シワや形がリアルですが、ひび割れた感じから粘土であることもわかり、超絶技巧によるスーパーリアルな本物感とは違った本物らしさがある不思議な作品です。

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左手前≪おぼえてる?-ボディスーツ≫、右奥≪おぼえてる?-みずたまのパジャマ≫

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左≪おぼえてる?-カーデガン≫、右≪おぼえてる?-くつした≫ 
 保科氏が現在進行形で取り組んでいるのがこの子供の衣服をモチーフにした作品。『瞬く間に成長していくあかちゃんと着れなくなっていく衣服から感じる、「過ぎ去る今の瞬間」をかたどる試みなのです』と語ってくれました。 

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子供の衣服をモチーフにした最新作と保科晶子氏
   
1つとして同じものがない、生き物のような個性をもった粘土ブロックのインスタレーションも独特の存在感を放っています。なんと、このブロックの中には、保科氏の思い出の品が入っているとのこと。乾いてできた自然な割れ目も作品の一部です。この作品を制作して、「記憶を保存したはずの粘土ブロックが乾くにつれて徐々に忘却も訪れること」に気づいたという保科氏。時間と記憶が作品に織り込まれて一体化しているようにも思えます。  

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粘土、作家個人の思い出の品によって作られた≪モノリス≫
 
「本当は時間も、記憶も、私たちには見えないのかもしれません。でも、美術ならば、ありえないと思えることができると信じて活動を続けています」という保科氏の言葉に、どこの国という枠組みを超えたグローバル フロントラインを感じます。保科氏は、フランスを拠点にご活躍中。 

【岡田葉:絵画は悪霊払い】
  DOMANI展の入り口を入ってすぐに目に飛び込んできたのがこの猫!小品がランダムにたくさん飾ってある中の1点だったのですが、コミカルな表情と手をユーモラスにさし出しているポーズが面白かった。プリミティブなタッチにも見えるのだけど、巧な表現方法にも見えた興味深い1点。そして反対側を見ると、この大振りなタッチとは正反対の超絶緻密なレースをモチーフにした作品が何点か見えて「随分幅の広い作家さんだな」と思いました。

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最初に目に飛び込んできて気になった猫の絵。

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猫の絵の隣に佇んでいただいた岡田葉氏。
 「日々の生活で見つけた、個人的に思い入れのある事柄やネガティブな感情=ノンフィクションを、絵画言語の形式=絵画の表面としてのフィクションに変換させる」と言う岡田氏。そして、「絵画の喜びの下において恐怖はユーモアに裏返すことが可能」とのこと!その意味において、絵画は岡田氏にとって悪霊払いなのだそうです。この発想に、グローバルな真の絵描きのスピリットを感じます。
    すると、こちらの超絶緻密なレースシリーズはどんなノンフィクションをフィクションに変換させたものなのでしょう!興味が広がります。本物のレースを編むようにして絵の具を置いて描いたとのこと。レースに空いた穴から向こう側の景色が見えた瞬間に大きく想像が羽ばたきます。私は、なぜか地中海のカプリ島を舞台にしたジャン=リュック・ゴダールの『軽蔑』を思い浮かべました。みなさんはどうでしょう?

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レースの布の向こうに青い風景が広がります!
岡田氏は、イギリスを拠点にご活躍中。

【秋吉風人:絵画という概念の解体と再構築】
  透明の板に色だけが浮かんでいる、絵と立体の中間のような作品が並んでいるのは秋吉風人氏のコーナー。絵画の概念を超えようとしていることが伝わっできた一方で、コレクターとしては、インテリアにもかっこ良さそうと感じました。近づいてみると、透明なアクリル板に、透明度の高い油絵具の色が乗っています。そしてそのアクリルの板が、空中で浮いて斜めに壁に立てかけてあるような形で飾ってあるのがスタイリッシュ!やはり家に飾ってみたくなります。

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≪naked relations≫シリーズと秋吉風人氏
     
秋吉氏にインタビューすると、「本来絵画の構造としてほぼ必ず存在するカンヴァスを取り除いて透明にすることで、一層目のカンヴァスの白を不可視化しています。そうすることで、油絵具の存在のみが浮かびあがり、塗り重ねてある層や筆致など、通常の絵画では隠れている部分が露わになります。」とのこと。絵画の歴史の中で私たちが「絵画」と考えていた概念を壊し、新しい地平を開こうとしているのですね!正にこれは、グローバルな発見につながる実験だと思います。

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斜めに飾ることで、白壁に色が映り込むところも作品の一部
 床置きが宙にういたような展示方法についても聞いてみると、「斜めにすることで、横から見ると透過してきた色が壁に映るところも作品です」と教えてくださいました。ただスタイリッシュなだけではないのですね!
 
「絵画という概念の解体と再構築」を続ける秋吉氏が、これからどんな発見そして発明をするのか楽しみです。秋吉氏は、ドイツを拠点にご活躍中。
   
その他、今回の記事には書ききれていませんが、映像作品などメディア作品も驚きをもたらしてくれるものがありました。是非会場にて体感してみてください! 

【開催概要】
『未来を担う美術家たち19th DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果』
会期: 2016年12月10日(土)〜2017年2月5日(日)
出展作家: 池内晶子、南隆雄、松井えり菜、三原聡一郎、山内光枝、今井智己、折笠良、金子富之、平川祐樹、曽谷朝絵、保科晶子、岡田葉、秋吉風人
会場: 国立新美術館 企画展示室 2E
住所: 東京都港区六本木7-22-2
時間: 10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)
        
毎週金曜日・土曜日は午後20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日, 2016年12月20日(火)~2017年1月10日(火)は年末年始休館
観覧料:一般 1,000円(800 円) 大学生 500円(300 円)
   ※( )内は前売および 20名以上の団体料金

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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