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紳士のたしなみ

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紳士のためのアートデート

ヴェネチアからバーゼルへ!アートの祭典はつながっている。アート記2019 【前編のハイライトはヴェネチア・ビエンナーレ!後編に続く】

2019年6月に、ヴェネチア・ビエンナーレとアートバーゼルを体験する旅に出ました。約10日間のアート体験を旅行記としてお届けします。アルプスを越えて、2つのアートの祭典はつながっていた!料理やホテル、鉄道など、珍道中を写真満載でレポートしますのでお楽しみください。 

 今回イタリアへの入り口はボローニャ。夜ついて早朝に出たので泊まっただけ。高速鉄道Italoを乗り継ぎ、お昼前にサンタ・ルチア駅に到着。駅を出ると目の前に運河とドゥオーモが現れてヴェネチアについた!と実感。ホテルは運河を渡ってすぐそこのカールトン&グランドカナル。橋を渡ろうとして早速名物に遭遇。友人が言っていた「橋の階段」。スーツケースをそのまま引いて超えると一発で壊れると聞いていたので、しっかり持ち上げて運びました。その後も無数の橋を渡ることになるのですが、全ての橋が階段になっています。日本のように滑らかにしてくれた方が旅行者には嬉しいのだけど。


サンタ・ルチア駅の運河とドゥオーモ


階段状の橋。スーツケースを引いていくと一発で壊れる!

  ホテルに荷物を置いたら、ヴェネチア・ビエンナーレの会場にレッツゴー!と勢い込んだところで、早くもハプニング。。。水上バスに乗ろうとするとなぜか入口にテープが張ってあります。「まさか閉まっている?」。不安は的中。レガッタというボート競技開催中で、夕方4時まで運行してないとのこと。ショック!でも「なんとかしてビエンナーレの会場に行かなければ」ということで、内陸を歩いていくことに。運河と石畳の町ヴェネチアは、車が走れないので、水上バスが止まっているとなれば、徒歩。15分で着くところが60分くらいかかるけど、町も見られるからいいかな。
 観光客たちの流れに乗り、迷路のような路地を歩き、橋をいくつも渡り、ついにサン・マルコ広場に到着。寺院も時計台も「おー、着いたね」と言ってくれてるようで嬉しかった。


サンマルコ寺院と時計台

  おなかもすいたので、まさに観光客向けといった感じの運河沿いのレストランでパスタを食べる。ボローニャで食べ損ねたボロネーズを注文。シンプルなパスタが大盛で出てきたけど、結構おいしい。さすがイタリア!そこから運河沿いに歩いていけば、ビエンナーレの1つ目の会場アルセナーレ(中世の造船所跡)につくはず。ほどなく、看板が見えてきました。方向音痴の私は、「こちらでいいんだ」とほっとする。


「ヴェネチア・ビエンナーレ第58回国際美術展」の看板

  さてここで、「ヴェネチア・ビエンナーレ第58回」のテーマ「May You Live in Interesting Times」について。第一印象は、このカラフルな看板からしても、「なんて明るいテーマ!」。『楽しい時代を過ごせますように』?。少し調べると、このフレーズは、中国の古い言葉由来で、イギリスの政治の場で皮肉めいて使われてきたもよう。Interestingは、単純に「面白い」というよりは、「不確実で一筋縄ではいかない」というニュアンスかな。要するに「大変だけど面白いじゃないか!」みたいなことでしょうか。日本語の記事では主に「数奇な」と訳されています。いつの時代も、誰にも予測がつかないのは同じなので、常に私達は「Interesting Times」を生きているのかもしれませんね。5日後に訪ねるアートバーゼルの大型作品展示コーナーでも同じようなコンセプトが通底していることを体感することになります。キュレーターインタビューも含めて【後編】にてお伝えします。

 
ヴェネチア・ビエンナーレ「アルセナーレ」会場の入口

  元は造船所だった趣のある石造りの建物が「アルセナーレ」会場。入ってすぐに、過酷な経験をした人々の独白が書かれた紙とマイクが多数設置された展示があり、様々な国の観客が熱心に読み聞きしている。インターナショナルな展示会場に足を踏み入れた実感が沸く。


観客が主体的に作品を鑑賞する姿がエネルギッシュ


森美術館で見たのと同じセッティングのアピチャッポン・ウィーラセタクンの作品を発見


太古からの女性パワーを見せつけつつも現代的なこの写真に惹かれる


このチェック柄には、作家自身の名前が名付けられたとのこと。イギリスのアンテア・ハミルトン/Anthea Hamilton作。ファッショナブルな空間に惹き寄せられて同化。


アルセナーレ会場で、最もその美しさに息をのんだのが韓国のAnicka Yi(アニカ・イ)の作品。究極に人工化した地球と宇宙がつながり、新しい生命がうごめいているかのよう!


アルセナーレで一番エキサイティングな参加型作品はこちら!アーティストのMark Justiniani と キュレーターの Tessa Maria Guazon との合作“Island Weather”。フィリピンパビリオンにて。高層ビルから近未来の新世界に飛び降りる直前の気分。最新のアヴェンジャーズに出演しているような気分にもなる。鏡の効果で無限に見えますが、1つのブロックは極めて短い。多くの人々が靴を脱いで上がっていました。群島であるフィリピンの地形を表現しつつ、人と宇宙の対話を促しているようだなと感じる。


一旦外に出るとそこには船!昔造船所だったことを再確認。アート作品のような佇まいですね。


イタリア館の入口が、空から飛び出てきたみたいでかっこいい。


町なかを通って、次の会場ジャルディーニ(庭という意味)へ


ヴェネチア・ビエンナーレ「ジャルディーニ」(カステッロ公園)会場に到着。

   ジャルディーニ会場では、国ごとに建設された建物の中にその国の今年の代表となった作品が展示されています。国別参加部門の金獅子賞はリトアニア館が受賞。パビリオン内に制作されたビーチで人々が環境破壊や絶滅種などについて語り、歌うというオペラパフォーマンス。タイトルは「Sun & Sea (Marina)」。『先行き不透明な「Interesting Times」という数奇な時代を共にしているのだから、喧嘩しないで協力して生きていこうよ』と呼びかけているよう。「自分の国だけよければ良い」とガチガチになっている国々にも、フワッと温かい空気を送り込んでいるみたいでいいな。

  そして日本館!こちらも世界中の観客たちが楽しそうに集っていましたよ。みなさんが大きなオレンジのバルーンに寝そべったり、すわったり、話したりしている光景がとにかく平和。私もすぐにオレンジバルーンに座って皆に加わりました。すると、リコーダー(縦笛)のランダムな音が聞こえてくることに気が付きます。その音色は、時に心地よく、時に不穏。「もしかしてこれは、来場者がバルーンの上で動くと音と連動しているのかな」と思って会場のスタッフにインタビュー。すると、「来場者の動きによって音のピッチが変わります。音色が必ずしも心地よくないのは、それも自然ということです。」とのこと。なるほど。笛の音は、訪れた人たちみなで創り出している和音のようにも聞こえ、うまくいったり、そうでもなかったりするところが、人間社会らしいし、自然ってそういうものなのかなと感じる。


日本館のオレンジのバルーンに戯れる各国からの来場者たち。今回の日本館代表作家は下道基行氏、安野太郎氏、石倉敏明氏、能作文徳氏。キュレーターは秋田公立美術大学大学院准教授の服部浩之氏。

  そして、スクリーンに映し出される大きな石は、大津波によって海中から地上に運ばれて日本各地に点在する巨岩「津波石」。今回の作品「Cosmo-Eggs│宇宙の卵」のメインです。信仰の対象や広場としての役割も持ちつつ人々と交流してきた「津波石」が「卵」であり、それがオレンジのバルーンにも憑依し、世界中のみんなが集まって一緒に動くとリコーダーの共演につながるという宇宙的な流れが巻き起こります。時に、世界の桃源郷ではないかと思うほど平和に感じる日本だからこそ発信できたアートではないでしょうか!


1957
年に完成した吉阪隆正の設計による日本館


オレンジのバルーンのおおもとは日本館の下から出ていました!根っこみたい。


総合展示場の建物もステキ。こちらには、「ヴェネチア・ビエンナーレ第58回」に出品している作家達の作品が違う形でまとまっていて「総合的」に見応えあり。

   18時閉館ギリギリまで鑑賞して満喫。さて、午前中に運航停止していたお騒がせ水上バスは、もう動いていました。早速乗って、ホテル近くの町中へ!


水上バスからの眺め


「コースメニューが2500円くらいで、中庭もあるよ!」と声をかけられたレストランに入る。結構フランス人のお客さんも多数。

 
ニョッキ、スズキ、ポーク、パンナコッタと、シンプルだけど美味しく仕上がっている。イタリア人は、本能で美味しい料理が作れるみたい。白ワインもハウスワインなのに、香り高く深みがあった!オレンジ色のカクテルは、巷の居酒屋で皆が飲んでいたもの。ギャルソンが「これ凄く美味しいから気に入りるよ」と勧めてくれたのですが、カンパリベースらしいこのお酒は、私には甘すぎたな。。。


運河沿いに輝いていた素朴なレストランでした。

 次の日は、水上バスも自在に乗りこなして教会や、美術館へ。フランソワ・ピノー氏の現代美術館であるパラッツォ・グラッシとプンタ・デッラ・ドガナが素晴らしかった。イタリアのクラシカルな建物を、安藤忠雄氏が現代的に生まれ変わらせている手腕も見事!百聞は一見に如かず。
 後編は、アルプス越えしてアートバーゼルからレポートします。実は、寄り道したサンモリッツがとても良かった!お楽しみに。

ヴェネチア・ビエンナーレ第58回開催情報

期間 5月11日(土)〜11月24日(日)
主催 ヴェネチア・ビエンナーレ財団
総合キュレーター Rulph Rugoff
日本館展示タイトル 「Cosmo-Eggs│宇宙の卵」
日本館主催 国際交流基金

#アートバーゼル2019 #ヴェネチアビエンナーレ2019
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菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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