Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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紳士のためのアートデート

Vol.6 Bunkamura(渋谷)の『ピーターラビット展』                 開催期間: 2016年10月11日(火)まで

 渋谷駅周辺の喧騒から少し離れ、松濤近くまで歩くと、東急百貨店本店横にあるBunkamuraza ザ・ミュージアム。コンサートホール、劇場、美術館、映画館、カフェからなる文化の発信基地ですので、様々な切り口から楽しむことができるクリエイティブスポットです。今回は、Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催中の『ピーターラビット展』を鑑賞するアートデートのご紹介です。

Bunkamura正面 

外観

展覧会概要❖

 絵本として日本でも親しまれている「ピーターラビット」。絵本を読まれた方や、ピーターラビットの食器・グッズなどをお持ちの方も多いのではないでしょうか。今年は、その作者ビアトリクス・ポター生誕150周年ということで、国内最大規模の『ピーターラビット展』が開催されることになりました!

 イギリスの絵本作家ビアトリクスが晩年を過ごした湖水地方にある2階建ての家ヒルトップの様子が再現されていたり、絵本に出てくるシーンが立体的に出現したり、自分たちも物語に登場しているような感覚も楽しめます。通常は、英国ナショナル・トラストが厳しく管理していて門外不出の、ビアトリクスによる絵本の自筆原画やスケッチや彼女の愛用品が、200件以上も初来日しているというから驚きです!ほのぼのするピーターラビットの動物達やストーリーに囲まれながら、ビアトリクスの生き方も追いつつ、温かいアートデートになりそうです。

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ピーターラビットの世界へLet’s Go!

 まず最初にビアトリクス・ポターが自費出版した『ピーターラビット』の初版本が目に入ります。

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私家版『ピーターラビットのおはなし』初版(英国ナショナルトラスト所蔵)  現在の絵本『ピーターラビット』シリーズ

 小さな茶色の本で、挿絵は白黒のインク画のみ!今や世界110ヵ国(35ヵ国語)で読まれる大ベストセラーの本としては、つつましやかです。そもそも、ピーターラビットのお話は、ビアトリクスが、以前彼女の家庭教師だったアニー・ムーアの息子ノエル君へのお見舞いの絵手紙から始まったのです。 

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ノエル君への絵手紙の直筆写し(英国ナショナルトラスト所蔵)   ビアトリクスが描いた≪素描「ピーターラビット」≫(英国ナショナルトラスト所蔵)

 「ノエル君へ あなたに、なんて書いたら良いのかわからないので、4匹の小ウサギの話をしましょう」ではじまります。こんな絵手紙をもらったら、すぐに元気になりそう!アニーは、息子に送ってくれた絵手紙を本として出版するようビアトリクスに勧めます。そこで、ビアトリクスは出版社へ売り込むのですが、すべて断られ、ついに私家版(自費出版)に踏み切ります。展示されているのは、その記念的初版。これが人気を博し、追加印刷となり、翌年にはカラー図版で出版社から出されることになります。このように、根気と情熱が歴史に残る仕事になるということは、現在の私達にも参考になりますね。                    

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            会場は、絵本の挿絵として出てくる場面がそのまま再現されていて楽しい!

 それにしても、絵本の名作は、ただかわいいだけではありません。結構残酷な現実がダイレクトに描かれていたりします。例えば、ピーターラビットのお父さんは、かつてマクレガーさんの畑で事故にあい、肉のパイにされてしまったということが、お母さんから淡々と語られます。だから、マクレガーさんの畑に入ってはいけないと子供たちに伝えたのです。

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ピーターの家系図。パイになったお父さん。

 ここで、本展監修者でビアトリクス・ポター研究の第一人者である大東文化大学教授の河野芳英氏にピーターラビットのイチオシの場面について聞いてみました。

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ビアトリクス・ポター研究の第一人者である河野芳英教授

 河野教授いわく、「ストーリーのクライマックスを、ドキドキハラハラするように描いているところが素晴らしい。声に出して読むと、その音のリズムや音感からも臨場感がひしひしと伝わってきます。例えば、ピーターが、マグレガーさんにふるいをかぶせられて捕まりそうになる場面。

“Mr. MacGregor come up with a basket which he intended to pop on the top of Peater,…”

となっていて、後半Pが押し寄せてきて緊迫感があります。良家のお嬢様だったビアトリクスは大変教養があり、シェークスピアも暗記していました。ピーターラビットも、声に出して読むと面白い詩的な仕掛けがたくさんあります。是非原文を声に出して読んでみてください。」とのこと。

この鑑賞ポイントは、一緒にいる彼女に伝えると、「カッコいい」と思われるでしょう!

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左上が、ピーターが捕まりそうになる場面。右下の、マグレガ―さんから命からがら逃げ、疲れ切って寝ているピーターにカモミールを飲ませるお母さんの姿もほほえましい!※Beatrix Potter生誕150周年記念特別輸入本セット。特設ショップにて販売中。

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会場の原画と合わせて見てください!

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カラーの原画も美しい。

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ビアトリクスが水彩で描く風景も軽やか。

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ビアトリクスさんの油彩の肖像画も展示。若かりし頃と晩年の彼女をしのぶことができます。

 河野教授から伺った、もう一つの逸話が、ビアトリクスの恋愛について。

『ピーターラビットのおはなし』の出版でビアトリクスの絵本の編集を担当したノーマン・ウォーンとビアトリクスはだんだんと親密になり、1905年にノーマンが手紙で彼女にプロポーズします。

ビアトリクスは大喜びでしたが、両親は家柄が違うと猛反対。すると、ビアトリクスにプロポーズの手紙を送った4日後に、ノーマンは急性白血病にかかってしまい、約1か月後に亡くなってしまいます。ビアトリクス39歳の時の悲劇です。でも、彼女は両親の大反対を押し切ってノーマンと婚約しました。誰にも揺るがされることなく、自分の気持ちを貫いたビアトリクスの愛は、ノーマンにも届いたのではないでしょうか!展示会場にもエピソードが展示してあります。

☆ここで、アートデートおすすめの会話例☆

あなた「運命ってどうなるかわからないものだね。今ここで○○さんと一緒にいるこの時間を大切にしたい!」

女性 「ステキ!」

あなた「誰が何と言おうと、○○さんが好きな気持ちは変わらないよ。」

女性 「ありがとう。」

【ポイント】

 ちょっと芝居がかっているでしょうか?!でも、ピーターラビットの世界ですし、ビアトリクスの恋愛エピソードに便乗して、たまにはこんな会話も良いかもしれません! 

ミュージアムグッズをプレゼントしてみては?❖

 『ピーターラビット展』のミュージアムグッズは宝の山です。数え切れないほど多種多様なグッズがありますので、何種類か集めて彼女にプレゼントしても喜ばれそうです。

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おいしそうなジャム!

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ピーターの耳にリバティー柄!

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キッチン用品など!

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瓶入りコーヒー!

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図録も絵本みたい!

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ハンカチとセットの絵本!

【お食事でも】

 美術館お隣のレストラン、『ドゥ マゴ パリ』では、ピーターラビットの故郷である英国にちなんだ「ローストビーフサラダとキッシュプレート」をいただけます。伝統的なイギリス料理の冷製ローストビーフとサラダ、フランスのパイ料理の一つキッシュロレーヌの盛り合わせです。広々とした店内でゆったりと語り合う時間を過ごせます。

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「ローストビーフサラダとキッシュプレート」価格:2,200円(税込)

それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを!

 【展覧会基本情報】

会期:2016年8月9日(火)~10月11日(火)※会期中無休

会場:Bunkamura ザ・ミュージアム

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

本展監修:河野芳英(大東文化大学・英米文学科教授)

お問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600 

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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