Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

触って!登って!石のアートから平和への願いを聞く👂@池田20世紀美術館(伊豆)

絵や彫刻、映像など様々な作品を独自の方法で制作して私達に見せてくれるアーティストたち。彼らは、どのようなことを考え、どんなメッセージを作品に託しているのでしょうか?
もしかして、託していないかもしれないし、「特にメッセージは発していないので作品そのものから何かを感じて欲しい」と思っているアーティストもいるかもしれません。
いずれにしても、今、私たちと同じ時代に生きているアーティストと一緒に、彼らが作った作品を観賞し、語り合い、時間を共有すると、新しく何かが分かったり、これから何かを生み出すインスピレーションになったり、とてもポジティブな刺激を得ることになります。

特に、作品を制作したアーティスト本人と一緒に鑑賞すると良いのは、本人が「こんな風に鑑賞してもらえると良いな」と思っている方法で私たちも鑑賞できることです。
例えば、美術館では多くの場合、一律「作品には触らないでください」となっていたりしますが(作品保護の観点からは当然なのですが)、実は触れることでその作品の本質が伝わるタイプのものもあるということです。
本当はそういうタイプの作品なのに、アーティストがもう亡くなっていて、それが誰にも伝わっておらず、永遠に触られることがないという状況に陥ってしまっているものももしかしたらあるかもしれません。。。

それはさておき、今回、池田20世紀美術館で展覧会を開催中の絹谷幸太さんの彫刻は、まさに触れられたり登られすることでその真価を発揮する作品なのです。そうはいってもやはり、美術館で展示するとなると、「触らないでください」とか、「登らないでください」とか、何かしら制限はつくこととなります。

今回は、「パトロンプロジェクト」として作家の絹谷さんと一緒に鑑賞しましたので、触ったり登ったりしながら、一番深いところにあるメッセージを、絹谷さんと「石」から聞くことができました。
さてそれはどんな体験だったのでしょう?
ぜひこの記事をお読みになってご一緒に体験してくださいね。

自然豊かなリゾート地・伊豆にある池田20世紀美術館に到着してまず見えてきたのは、

カラフルな石を積み上げてできた高~い塔。6.5mくらいというので、二階建ての建物くらいの高さです。土台を含めて11種類の石でできています。

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手前右が彫刻家の絹谷幸太さん。奥の作品が『万物の鼓動~自然と人と文化のつながり』

出迎えてくれた絹谷さんに、早速色々と質問。
「ひとつの石をこの形にするのにどのくらいかかるの?」
「重さはどのくらいあるの?」

絹谷さんは一つ一つ丁寧に答えてくれます。
「例えばあの石は、岩山から切り出した時は車一台くらいの大きさなのだけど、あのような形にするのに2年くらいかかります」
「最初に集めた原石の総重量は約100トン。ひとつ6.6トンの石もあったりいろいろで、あの塔全体では約20トンぐらいになります」

そして、早速、「この土台に座ってみよう!靴のままこの上に立ってもいいですよ」と言ってくれたので、みなで座ってみました。

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すると、土台の石が温かい!
「この石は、岡山県から持ってきた桜色花崗岩(約8000万年前)です。一目惚れしたのですよ。実はこの塔の11個の石は、世界6大州・5大陸の花崗岩を調査研究して念入りに選びました。特に土台の石と一番てっぺんの石は日本の石にこだわって、国内をくまなく歩いて探しました。てっぺんの石は新潟県糸魚川産の翡翠(約5億年前)です。縄文時代の私たちの祖先が初めて身につけた石が翡翠でお守りだったのです」と絹谷さん。

わ~!私たちの想像は、縄文時代までトリップ!
初めて、キラキラ輝く不思議な石を発見した縄文人の気分になってみたりして。他の石も、中国やオーストラリア、ブラジルなどから選りすぐられてこの塔になったことや、触ってみると、それぞれの石の温度が全然違うことがわかりました。

そして、世界6大州・5大陸の花崗岩をこのように組み合わせていることには深い意味が!
「この作品の名前は『万物の鼓動~自然と人と文化のつながり』で、今回の展覧会全体のテーマと同じです。世界中の人や文化は繋がっていますし、このように一緒になって、助け合って平和な世界を作っていきましょうというメッセージを込めています」と絹谷さん。

「この作品を世界中の国々に持って行って、立ててもらって、そのメッセージを伝えたいね」と大人も子供も盛り上がりました。

それでは、美術館の中に入ってみましょう!
中に入って皆がすぐに走り寄って行ったのは、こちらの作品です。
すぐに靴を脱いで石の上へ!なぜみんなそんなことができたのでしょう?

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実はこの作品とは再会なのです。
今年の5月に、絹谷さんのアトリエを訪ねた時に、それぞれの石のお話を聞いて、一緒に戯れた彫刻たちです。

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アトリエで馴染んだ時の光景

このプロジェクトは2回シリーズで、5月に絹谷さんのアトリエで未完成品も含めて観賞し、11月に改めて完成品も含めて再会するという時空をまたいだ体験になるようデザインしたパトロンプロジェクト(主宰:菊池麻衣子)なのです。(アトリエ訪問の記事は神奈川新聞に掲載されました

こちらの作品とも再会。

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アトリエで馴染んだ時の光景

そしてついに、アトリエで制作中だった大作が、完成した姿に出会うことができました。

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アトリエを訪ねた時は、このような感じで絹谷さんが四角い穴を彫っていました。

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アトリエで制作していた時の絹谷さん

色合いも随分変わり、裏面はこんな風に!

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なんと、石をはめ込んだのですね。
まず、先ほどの、四角い穴が無数に彫ってある面について伺いました。

「この作品は、私が学生時代に購入した楠木を約20年間乾燥させた後に彫ったものです。作品にしなければならないと感じたきっかけは、2022年に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻です。毎日報道される侵略行為。。。無数の四角い穴は、人類による爆撃で地球上に穿たれたくぼみを表現しました」と絹谷さん。

たくさんの傷跡が着いた大きな背中のような楠木。。。
見ていると悲しくなってきます。
でも、絹谷さんは、そんな状態で私たちを見放したりはしません!
反対側にまわると、今度は四角い美しい石がはめ込まれています。さっき見た四角い傷が、石のおかげで治ったような!

「こちら側には、世界各地の様々な石をはめ込みました。お互い侵略し合うこともなく、平和のハーモニーを奏でています」と絹谷さん。

あ~よかった!人類には、まだこのように平和に生きていく希望があることが感じられます。

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中でも真ん中にはめ込まれているこちらの石は、共生のシンボルとのこと。
この石は、ブラジル・ミナスジェライス州Salinas(ササリナス)で、かつて川から運ばれた石ころが何億年もかけて出来上がったそうです。いろいろな石が多方面から運ばれ、寄せ集まり、長い年月をかけて変形し、固まっています。よく見ると、それぞれが、他の石の邪魔にならないようにうま~く変形して譲り合っているのが分かります。
人類よりも何億年も長く地球上で時を経てきた石が、私たちにお手本を見せてくれているのですね。

さて、次に私達が釘付けになったのは、顔の部分だけが大きく描かれた動物たちの絵。
実は、これらの絵は、絹谷幸太さんの妹さんである香菜子さんが描いたもの。この展覧会は、兄妹による二人展なのです。
香菜子さんが描いた動物たちは、とにかく目力が強い。

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思わず寅さんに引き寄せられていくと。。。あれ?瞳の中に何かが!

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なんと!
瞳に発砲中の戦車が写っています(涙)
みんなで唖然。なんて悲しいのでしょう。。。

自然は、人類の蛮行をちゃんと見ているのですね。
この寅の瞳に映っている光景は、子供たちの瞳にも映る光景。
美しい瞳には、美しくハッピーな光景が映ってほしい!
心よりそう思った瞬間でした。

そんな私たちの目に飛び込んできたのがこの作品。
その名は「小型の太陽」。

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表面と裏面は全然違う彫刻が施してあって、表面は太陽ですが、裏面には足場も彫ってあって、登れるようになっています。

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こんな風に登れます!
太陽の女神みたいでステキ。

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みなで太陽の彫刻に手を触れながら、絹谷さんのお話を聞きました。
「この彫刻は、広島に落とされた原爆の姿形とほぼ同じです」と始める絹谷さん。おおっ、またシビアなお話!
「ロシアが、ウクライナとの戦争の関連でいつ核兵器を使ってもおかしくないと思われる状況の中で作りました。もちろん使われないことを願っています」と続ける絹谷さんのお話を、子供達も一緒に真剣に聞きました。

そして、このようなアートを体験した私たちは、しっかりと自分の目で見て考え、何かおかしいことがあったら、はっきりと自分の考えを表現できるようになろうと決心しました。

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鑑賞の後は、美術館併設のカフェ「レジェ」で楽しいティータイム。
子供達は、独立したテーブルで、大人っぽいドリンクをオーダーして何やら談義。世界平和について、大人には思いもつかないような秘策がひらめいたのかもしれません!
みんな、頼りにしてるよ!

【池田20世紀美術館での展覧会情報】
「絹谷幸太・香菜子二人展「万物の鼓動」(仮題)」
開催期間2022年10月13日㈭~2023年1月10日㈫
休館日毎週水曜日
開館時間9:00~17:00
入館料一般1,000円高校生700円小・中学生500円

【「絹谷幸太・香菜子二人展「万物の鼓動」」コンセプト】
石、大地、海、そして空の雲にまで生命が宿り、その鼓動を感じると言う兄と妹がいます。彫刻家・絹谷幸太と日本画家・絹谷香菜子。“万物の鼓動”を表現したいと兄は石を彫り、妹は絵を描きます。

兄・絹谷幸太は49歳。石が発する無言の声に耳を傾け、石と対話をしながら彫り続けて30年を超えます。ブラジル日本移民100周年記念モニュメント「夢と感謝」(サンパウロ市カルモ公園)を始めとする大作や、繊細な優しさに溢れる小品など数多く発表しています。幸太の彫刻では、よじ登ったり、触れて遊んだりして身体全体、五感を総動員して楽しんでもらいたいと言います。

妹は日本画家・絹谷香菜子37歳。墨絵をベースにした独特の色彩表現で、主に動物の生きる力強さや生命の鼓動を描き続けています。生きるものの逞しさを描いた「青龍」「白虎」、父・絹谷幸二との合作「生命の輝き」など斬新な作品を発表してきました。香菜子が日本画を描き始めたのは6歳の頃。大学時代の幸太が石を彫るときに香菜子の絵具用に石材のかけらを細かく砕いてくれたのがきっかけ。兄と妹が描く万物の鼓動。どんな物語を紡ぎだすのでしょう。

これまでの二人の作品は、下記のホームページでご覧になれます。
絹谷幸太HP:https://kotakinutani.com/about/
絹谷香菜子HP:https://kanakokinutani.com/

絹谷さんのアトリエ訪問の体験が書かれた記事はこちら⇒https://artplaza.geidai.ac.jp/column/11890/
パトロンプロジェクトHPはこちら⇒https://patronproject.jimdofree.com/

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菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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