Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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紳士のためのアートデート

Vol.12 KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭茨城県北芸術祭 総合ディレクター南條史生氏インタビュー                   開催期間: 2016年11月20日(日)まで☆

❖芸術祭の概要❖

 風光明媚な海と山が織り成す豊かな自然に恵まれた茨城県の北部は、かつて岡倉天心や横山大観らが芸術創作活動の拠点とした五浦海岸をはじめ、独自の風土や歴史、文化、食、産業など、クリエーションの源となる要素を有しています。こうした資源の持つ魅力をアートの力を介して引き出すことにより、新たな価値の発見と地域の活性化を図るために開催する国際的な芸術祭。県内には筑波大学や研究所等があることで科学技術発展の拠点になっていることから、今回の芸術祭はアート、自然、人間の対話に加え、最先端科学技術との相乗効果も狙っている点がユニーク。

 参加アーティストは、チームラボ、落合 陽一、AKI INOMATA、イリヤ&エミリア・カバコフら約85組の個人/グループで、うち海外からのアーティストも多数。日常を超越した発想、大自然や科学とアートのコラボレーションから生まれる驚きの感動に出会いに、出かけてみましょう! 
 デートにも一味違った刺激をもたらしてくれそうです。

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自然とアート!こんな情景を見ただけでもワクワクしませんか?作品は、イリヤ&エミリア・カバコフの≪落ちてきた空≫。高萩市の海岸にて。

【総合ディレクター南條史生氏に聞く。「なぜ今茨城県の北?」】

 ところで、茨城県北芸術祭の総合ディレクターは、森美術館の館長として世界を股にかけてご活躍の南條史生氏。南條氏が敢えて手掛けられるからには、スペシャルな理由があるのでは?と思い、直接インタビューさせていただきました。

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   茨城県北芸術祭2016の総合ディレクター南條史生氏

Q:芸術祭林立状態とも言われる中、茨城県北で新しい芸術祭を企画なさったのはなぜでしょうか?

南條氏:
 「地方の芸術祭はすでに日本に沢山あるし、最初は断っていたのですが、一度見にいってみようと考え、県北に行ってみたら自然が素晴らしかったし、岡倉天心の事績や、クリストの作品が実現した歴史もあるので、興味を引かれ、だんだん、これは実現する意義があると感じるようになりました。自分が楽しんで展覧会を作れば、きっと見る人も楽しく見るに違いない、という思いで着手しました。ミッションとしては、茨城県北部 を知ってもらい、悪くないな、また来てみようという風に思ってもらうこと、そして特定の自然、文化をイメージできるようにすることを目指しました。

 経済効果についても考えました。本当にこの地域を進行する方法は、地域に住んでいる人たちが、変わることです。その方法はみんなが創造的に生きること、これしかないと思います。芸術祭をきっかけに、昨日とは違うことをやってみようというインスピレーションを得ること、違う生き方に挑戦してみること。それが人間を元気にして、新たな経済効果をもたらし、結果的にはその社会を活性化するのではないかと思います。例えば、新しい商品を開発してみたり、パッケージデザインを変えたり、おいしい食材を基に小さなレストランを始めてみるなど、実はいろいろとできることはあるはずです。 
 となると、芸術祭一度だけではその本当の意義は伝わらないし、役割を果たせない。やはりこれは継続することが重要だと思うようになりました。」

Q:芸術祭は、アートの民主化とも言われていて、より裾野が広がるという意味では受け手側への恩恵が感じられますが、一方、参加アーティストは潤うのでしょうか?

南條氏:
 「少なくとも県北芸術祭では、制作費を負担し、若干の謝礼を出しています。しかし、芸術家がこれで大きな利益が上げられる場所ではない。むしろ多くの人に作品を見てもらう機会なのです。この芸術祭では、典型的な彫刻や絵画は大変少ない。それは売りにくい、売れるものは少ないと言うことです。世界のアート市場は7兆円。でも日本のアート市場は0.5兆円しかない。日本は基本的にアートが売れない国です。一方で日本は美術館の観客の数は極端に大きい。ということは、日本は、所有しないけどアートを楽しむ人が多い、意識は文化的だけど個人で所有はしないという社会だと言えるのではないでしょうか。

 芸術祭もそうした日本の特徴を背負っている。そもそも売れるものがすくないということは、売ろうと思っていないのかもしれない。しかし、みんなで楽しめるものが沢山ある、観客は自分で参加し、家族で楽しむ。アーティストは、アートマーケットに作品を売って、大もうけをするのでなく、地域の人と一緒に活動して、その時間を楽しみ、人々とのコミュニケーションを楽しむ。大金を稼ぐことが目的ではない。という風に見えるわけです。

 アーティストは、それまで施主であった教会や王族から決別し、富裕層に市場を移してきたわけですが、マーケットで作品が売れない日本では、『コミュニティーの人とたちとアートを楽しむことがいいのだ』という事になれば、それはもっとも民主的なモデルなのではないでしょうか。

 作品がヨーロッパのアートフェアで売れなくても、別な意味があると考えることが出来るわけです。実は日本は、海外から入ってきた芸術祭スタイルであるビエンナーレやトリエンナーレ、さらには現代美術さえも、日本化して、日本型の形態に作り直し始めているのではないか。そして「芸術祭」が日本の各地にあるお祭りのように、細分化し、増殖しつつあるのではないか。それがいけないことなのか?むしろ、その将来には、だれもが参加してアートを楽しむ社会が待っているのではないか。それは究極のアートの民主化ではないのか、そんな風に考えることができます。」

Q:様々な芸術祭に声をかけられ、出品はするものの、膨大な時間と制作費がかかるのに十分な制作費が支払われなくて疲弊するアーティストがいると聞いたことがあります。茨城県北芸術祭では、アーティストにどのような条件で参加していただいているのでしょうか?

南條氏:
 「大判振る舞いも出来ないけれど、制作費はカバーするのが基本です。しかしこれだけ地方の芸術祭が乱立すると、そうした謝礼や制作コスト部分をきちんとルール化していないところもあるかもしれません。となると、それは芸術祭の問題というよりは、マネージメントの質の問題になると思われます。全部が同じルールでやっているわけではないですから。」

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 茨城県北芸術祭をきっかけに、日本各地で開催されている芸術祭に関して疑問に思っていたことを南條氏に伺ったところ率直にお答えいただきました。乱立する芸術祭の課題としては、マネージメントの質を上げていくことや、アーティストなど参加する側もしっかりしたマネージメント体制の芸術祭を選択していく(ブラック企業のような芸術祭には参加しない)といった判断力を問われるのではないかということが浮かび上がってきました。

内容の濃いお話を伺ったところで、県北芸術祭の実際の体験をご紹介いたします。

 【県北芸術祭のコースは大きく分けて「海側」と「山側」】
 1日ではとても周り切れない広大な地域に展開している茨城県北芸術祭。1日は海側、もう1日は山側とコースを分けて巡るのがおススメです。今回は取材に伺った海側コース、北茨城市から高萩市を経て、日立市へと南下する旅で出会った作品を中心にご紹介します。

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茨城県北芸術祭開催地域の地図

 【海側コースの紹介】
 まず最初に向かったのが、茨城県天心記念五浦美術館。かつてこの地を活動の拠点とし、日本画の近代化に大きく貢献した岡倉天心や、横山大観など五浦ゆかりの作家たちの足跡を鑑賞できる美術館。ここで、ウルトラテクノロジスト集団・チームラボが作品を展開。アートと科学を融合させ、私達の動きに反応するインタラクティブな作品を展開するチームラボは、まさにアートと科学技術の相乗効果を体現する代表選手!本物のお抹茶の中にお花が咲き、器を動かすと花が散る作品≪小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々≫からは和の美が匂いたちます。

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≪小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々≫。お抹茶の器を動かしたり、実施にお茶の匂いを嗅いだりできる。
 

 部屋全体に漢字や風景が浮かび、漢字をタッチするとその字が意味する情景が音とともに大きく現れる作品は、時空を超えた違う日本に降り立った気分。アルファベットなどとはちがい、漢字自体が意味を持つ日本独自(漢字という意味では東アジア独自)の言語の特徴も感じられる作品。

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≪世界はこんなにもやさしく、うつくしい≫は、いろいろな漢字をタッチしているうちに時間を忘れてしまいそう!
 

【再建された岡倉天心の六角堂】

 太平洋に張り出した岩盤の上に、岡倉天心みずからが思索の場所として設計したという赤い六角堂が建っています。東日本大震災津波に襲われて、土台のみを残して姿を消した六角堂は、見事に復活していましたが、遥か上方に「津波到達点」の表示があり、津波の爪痕を生々しく感じました。須田悦弘や、ジャン・ワンの作品を鑑賞できます。

 六角堂の中にある須田悦弘の作品は、岡倉天心の「間」や「儚さ」といった飾らない美学を象徴するような雑草と花の木彫を、ささやかに配置しています。筆者は、板間から本当の雑草が芽を出しているのかと思いました!

 中国現代美術の代表的作家、ジャン・ワンの作品は、中国奇岩を象ったメタリックな彫刻。
六角堂は、新天地を求めた晩年の岡倉天心がその後の拠点と定めた場所です。炭酸塩コンクリーションによる自然の奇岩が突き出た五浦海岸の地形とシンクロしつつも未来的な印象。

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復建された岡倉天心の六角堂。真っ青な海に赤が映えます。崖の最先端にちょこっと建っています!

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六角堂に射す日が神々しい。中には須田悦弘の作品≪雑草≫が。自然に生えたように見える雑草が実は彫刻!

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津波の生々しい記録を伝える「津波到達点」

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メタリックにそそり立つジャン・ワンの奇岩彫刻。≪Artificial Rock No.109≫

【高萩市の海岸に落下し、浜辺に突き刺さる空!】

 「昔、ある航空マニアの、部屋全体に空の絵の描かれていた建物が、台風によって吹き飛ばされた」という解説文があるようですが、真っ青な空がドサッと落ちて来た海岸を見ただけで、あらゆる想像が自由に膨らみます。子供のころ、空って落ちてこないのかな?なんて思ったことはありませんか?夢でみたことはありませんか?目の前に落ちている空に近づいて、戯れてみてはいかがでしょう。空と一緒にアートの一部になってみましょう!

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イリヤ&エミリア・カバコフ≪落ちてきた空≫

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≪落ちてきた空≫と一緒にいると、いつの間にか自分たちもシュールな世界の一部になっています。 

【やどかりも、私達も仮住まい】

 日立市の「うのしまヴィラ」では、≪やどかりに「やど」をわたしてみるーBorderー≫の生態展示が開催中。生態展示って何?と思われるかもしれませんが、なんと、作品として制作した人工の貝殻にやどかりを住まわせているのです!制作したのは、AKI INOMATAさんで、2009年から、自ら制作した人工の殻にやどかりに引越ししてもらうプロジェクトをスタートしています。やどかりが背負っていた貝殻をCTスキャンし、そのデータを元に3Dプリンタで出力した人工の殻の上部には、ニューヨークのマンハッタンなど、世界各地の都市を模した形が彫刻されています。その透明な殻だけでも作品として美しいのですが、この作品は、生きたやどかりが住んでこそ完成することが改めてわかりました。

 透明な人工殻の中でしきりに手足を動かすやどかりは、居心地が良いらしく、長生きするそうです。殻が世界各地の形をしていることから、視点も世界に広がります。スタッフの方が、「AKI INOMATAさんは、やどかりだけではなく、私達人間も仮住まいしていると考えているのです」と説明してくださった言葉が印象に残りました。

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AKI INOMATA
の作品≪やどかりに「やど」をわたしてみる ーBorderー≫

【日立駅】

 海側アートの旅のラストは、日立駅で締めくくります。建築家の妹島和世がデザイン監修したガラスの駅舎を、全長300メートルの虹色のカッティングシートで覆いつくした日立駅は、全体がアート。日立駅を虹色に変身させたアーティストは、フランス人のダニエル・ビュレン。そして、風船のような形をした風変りな望遠鏡は村上史明による作品。覗いてみると???是非試してみてください!一瞬現実の風景と見紛いますが、きっと不思議な体験ができると思います。

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 村上史明≪風景幻灯機≫  ≪回廊の中で:この場所のための4つの虹 ー KENPOKU ART 2016のために © DB-ADAGP Paris≫

     海とアートに囲まれて、どこか遠くに旅したようなアートデートになりそうな茨城県北芸術祭。気になる彼女を誘ってみてはいかがでしょうか。

それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを!

 【芸術祭開催概要】
名称:KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭
総合ディレクター:南條 史生
会期:2016年9月17日(土)~11月20日(日)[65日間]
開催市町:茨城県北地域6市町
日立市 高萩市 北茨城市 常陸太田市 常陸大宮市 大子町

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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