Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

Vol.2 サントリー美術館(六本木)の 『原安三郎コレクション 広重ビビッド』展   開催期間: 2016年6月12日(日)まで

サントリー美術館は、六本木ミッドタウン3階にある美術館です。

 隈研吾氏による建築で、和の風合いを生かしたスタイリッシュ空間でアートを楽しむことができます。お洒落なカフェ、レストラン、雑貨などのショップに囲まれてゆったりすごせるミッドタウン内にあるサントリー美術館は、デートコースにぴったり。

今回は、歌川広重の浮世絵の名作を鑑賞するアートデートです。

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広重ビビッド展開催中のサントリー美術館エントランス

展覧会概要❖

 江戸時代に活躍した人気浮世絵師歌川広重の晩年の代表作である〈名所江戸百景〉および〈六十余州名所図会〉の揃物を全点初公開している展覧会。「広重の作品は、かなり見てるから特に珍しくないかな」と思いかけたあなた、そんなことはないのです。日本財界の重鎮として活躍した日本化薬株式会社元会長・原安三郎氏のコレクションなのですが、ほとんど公開せずに地道に集められた作品なので、秘蔵されていた名品の多さにまずは驚くのではないでしょうか。また、広重と摺師が一体となって色彩や摺りを検討しながら完成させた貴重な初摺の一揃いであるところも重要。初摺の揃いは、国内にも数セットしかありません。保存状態が極めて優れているため、さっき摺られて出てきたのではないかと思われるようにしっとりと濃厚な色彩です。

   さて、新緑が輝き、爽やかな初夏に待ち合わせ場所に現れた彼女は白いワンピースに淡いブルーが涼し気なシースルーのストールという装い。思わず「わー綺麗!」と思ったらすぐに伝えましょう。

☆ここでいきなりアートでデートおすすめの会話例☆

あなた:「白いワンピース珍しいね。綺麗!似合うよ」

彼女:「ありがとう!」

【ポイント1】会ったらすぐほめる。

 最初にほめられると彼女の気分もアップ!

「気づいてくれたんだ、うれしい。」とぐっと心が近づきます。

心が近づくチャンスですから、デートの最初の方に伝えたほうがいいですよね。

【ポイント2】良いと思った事実に「綺麗(または、かわいい)」を加える。

あなた:「白いワンピースだね」

だけの場合、彼女:「そうだけど、なにか?」となってしまいます。

白いワンピースで綺麗(または、かわいい)ということを伝えましょう!

※モテ会話文法⇒「いいなと気付いた点」+「綺麗(または、かわいい)」

展示作品ピックアップ❖ 

 展示会場に入って最初に目に飛び込んでくるのが、<六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波>。濃いブルーと淡いブルーのグラデーションが、白い泡と一緒にぐるぐる渦巻く迫力の1点。版画でこのような色と動きを表現できることに感動します。海面や川面、空の表現に深みを与えるこのグラデーションは、「拭きぼかし」と呼ばれ、その「拭きぼかし」の一種である「あてなぼかし」が摺師の高度な技術によるものとのこと。

 本コレクションの所有者である原氏の出身地徳島の図であることから、特別に大切にしていた作品と考えられます。

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六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波  歌川広重 大判錦絵 安政2年(1855) 原安三郎コレクション

 ☆アートでデートおすすめの会話例II☆

あなた:「この深い藍色が鳴門の迫力を増しているね。

     鳴門の渦見たことある?一緒に行ってみたいね」

彼女:「行ってみたいね」

【ポイント3】一緒にあちこち出かけたいことを伝える。

 男性が、共に時間を過ごしたり、旅行したりしたいということがわかると親近感が沸きます。 

 広重展には、東京都内(江戸)の名所はもとより、各地の絶景や自然を描いた作品が次々と出てきます。最初に一緒に現地に行くイメージをつくると、その後は、1点1点見ながら旅行気分で展覧会を巡れます!浮世絵と一緒に、日本地図上のどの辺にあるかと、実際現地に行って撮影した写真も展示してあるので、臨場感があり様々な想像が膨らみます!

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六十余州名所図会 山城 あらし山 渡月橋 歌川広重 大判錦絵 嘉永6年(1853) 原安三郎コレクション

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六十余州名所図会 駿河 三保の松原 歌川広重 大判錦絵 嘉永6年(1853) 原安三郎コレクション

◎初摺と後摺の違いを観ることができる絶好のチャンス。どこが違うか2人で探してみては?

 なんといっても、今回の見どころの1つは、広重作品の、「初摺(しょずり)」を一挙に観られること。「後摺(あとずり)」は、人気が出た絵柄を追加で再制作したもので、人々の需要に早く応えるため、手数を簡略化した大量生産品なのです。初摺は広重立ち合いのもと、当時トップクラスの摺師たちと力を合わせて完成させる約200枚ほどですから、クオリティーにはかなり差があるはず。でも、初摺だけを見ても比較しないとなかなかそのすごさはわかりません。

 今回はなんと、めずらしく同じ絵柄の初摺と後摺を比較できる作品が1セットありますので是非お見逃しなく。それが、<江戸 浅草市>。①と②を比べてみてください。

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①                         ②

①六十余州名所図会 江戸 浅草市 歌川広重 大判錦絵 嘉永6年(1853) 原安三郎コレクション 初摺 

②六十余州名所図会 江戸 浅草市 歌川広重 大判錦絵 嘉永6年(1853) 原安三郎コレクション 後摺

 ②の後摺は、赤い色が、かなり薄かったり、初摺で見られる空のグラデーションや雪が後摺ではわかりづらかったりと、その違いをはっきり確かめることができます。

 案内をしてくれたサントリー美術館広報担当の方は、「間違い探しみたいな感じで2点を見比べてみると面白いです。この色の違いは、実物をみてこそ実感できます。」とのこと。ここでも会話が盛り上がりそうですね。

 〈名所江戸百景〉の中にもユニークな作品を発見しました。

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名所江戸百景 深川萬年橋 歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857) 原安三郎コレクション

 亀がつるされていて、一見「動物虐待?!」かとも思ってしまいますが。。。これは、捕獲した鳥獣を山川に放ち、殺生を戒める儀式である放生会。旧暦8月15日に行われた儀式で、萬年橋ではその名前にかけて万年も生きるという亀が売られ、その亀を買い、川へと放ち、善行を積んだのでした。亀が大胆にフォーカスされて、遠景の小さな富士山とのコントラストで亀の命の大きさを表現しているようでもあります。特に大胆なユニークさを強調しているのが、作品の外側が木枠で縁取られているところでしょうか。一見窓枠に吊るされているのかと見えますが、実はこの木は桶で、桶の持ち手のところに亀が吊るされています。そうすると、窓枠かと思ってみていた縮尺感覚が一転して不思議な感覚に陥ります。

〈名所江戸百景〉の中には、今も変わらない地形で残っている場所もいくつか見られますので、「今度ここに行ってみようよ」などと、次のデートの計画を立てながら見て回るのも楽しいです!

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名所江戸百景 するかてふ 歌川広重 大判錦絵 安政3年(1856) 原安三郎コレクション

  日本橋界隈。絵の手前に見える越後屋は、現在の三越デパートの前身。現在も同じ場所に三越日本橋本店があります。江戸時代には、富士山がくっきり見えたのですね。

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名所江戸百景 野山内月のまつ 歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857) 原安三郎コレクション

 「月の松」は上野にあった名木で、枝が円を描いて曲がり、満月を連想させることから名付けられました。明治の初めに台風で折れてしまいましたが、近年この「月の松」が再現されました。見に行ってみるのも面白そう。

お茶でも❖

サントリー美術館のお隣には、「加賀麩 不室屋」があります。不室屋は150年の伝統を誇る金沢の老舗。麸を現代的にアレンジした軽食や甘味が楽しめます。「不室屋パフェ」はいかがでしょう。見た目からしてワクワクします!

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不室屋パフェ(897円 税込)

ミュージアムグッズをプレゼントしてみては?❖

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 <深川萬年橋>や<亀戸梅屋舗>を模した缶がかわいい榮太樓飴はいかがでしょうか。かさばらないのも良いですね。(864円 税込)

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 こちらの日傘は、品があり人気があるそうです。藤本染工芸の型染日傘。柄の部分が竹になっているのもお洒落ですね!夏にかけて紫外線が気になる季節に粋なプレゼントかもしれません。(19,440円 税込)

それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを!

 

展覧会基本情報】

会期:2016年4月29日(金・祝)~6月12日(日)

開館時間:10時~18時(金・土は20時まで)

※入館は閉館の30分前まで。休館日火曜(6月7日は開館)

入館料:1,300円

会場:サントリー美術館(東京ミッドタウン ガレリア3階)

アクセス:地下鉄「六本木駅」直結、地下鉄「乃木坂駅」より徒歩約3分

HP: http://www.suntory.co.jp/sma/

 

 

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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