Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

Vol.8東京都写真美術館・TOPMUSEUMの『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展           開催期間: 2016年11月13日まで   

 恵比寿ガーデンプレイス内にある、日本で唯一の写真・映像の総合美術館が東京都写真美術館。約2年ほどかかった大規模改修工事の後、2016年9月3日に待望のリニューアル・オープン!展示室やホールのイメージを一新して、魅力あふれるカフェやショップも併設。恵比寿ガーデンプレイス内というロケーション、話題の新アートスポットとして、アートデートとしても旬な美術館です。リニューアル・オープン第一弾を飾る注目の展覧会は、『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展。写真の領域を遥かに超えた、アーティスト杉本博司氏が夢想する「世界の終末」が展開されています。

 展覧会概要❖

 写真家で現代美術家の杉本博司氏は、<ジオラマ><劇場><海景>シリーズなどの大型カメラで撮影された写真作品により国際的に高い評価を確立しました。特に、画面のちょうど真ん中に水平線が写ったモノクロの写真シリーズ<海景>は、どこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。
 その杉本博司氏によるこけら落しは、<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない><廃墟劇場><仏の海>の3シリーズによる展覧会。おめでたいリニューアル・オープン展に<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>とは!なんか、ドキッとしますね。でも、杉本博司氏はこの究極の終末観の中に私達を置いてきぼりにするわけではありません。ぜひ、大切な人と、<廃墟劇場>、<仏の海>へと歩を進めてみてください。
 

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新しくなった東京都写真美術館(通称・TOPMUSEUM)のエントランス

<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>

 この言葉からイメージできる通り、展覧会のテーマは人類と文明の終焉についての壮大なストーリーです。カーディーラー、養蜂家、政治家など、様々なプロフィールの人々が綴る、滅亡の日の33のシナリオが、写真や立体物、インスタレーションや音によって表されています。

 ❖「比較宗教学者」のシナリオ

 美しくも象徴的なのは、「比較宗教学者」の部屋。杉本博司氏による写真≪ラストサパー サンディ≫が掲げられています。ハリケーンサンディにより水没したために、キリストの顔が半溶解した写真が神聖な悲壮感を漂わせています。前に置かれたテーブル上に転がるのは、西暦28年製のロマネコンティの瓶。最後の晩餐のワインだったのだろうか。

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「比較宗教学者」のコーナーより

「コンテンポラリーアーティスト」のシナリオ

「(中略)アートが世界滅亡の引き金を引いた事に誇りを持って私は死ぬ。世界はアートによって始まったのだから、アートが終わらせるのが筋だろう。」

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「コンテンポラリーアーティスト」のコーナーより 

このように、滅亡のシナリオが次々と展開されていきます。

 ラブドール・アンジェ。古い扉の覗き穴から垣間見ます。アンジェの言葉が紙に綴られています。「(中略)女の社会進出は果てしなく広がり(中略)男は、女に性的な魅力を感じない、対女性萎縮症候群と呼ばれる症状を示しました」。なんと、男はラブドールしか愛せなくなってしまったようです!
 アンジェの言葉のラストは次の通り。「(中略)でも、ごめんなさい、私達は不妊症。そしてこの世に、人は生まれなくなったのです」。
 

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「ラブドール・アンジェ」のコーナーより 

 漁師のコーナー。「突然カンブリア紀のような生命進化新時代が訪れ、多くの生命種も意識を持ち始めてしまったのだ。人間を罠にかけ、落とし穴に落とす狸が現れるとは(中略)人間も他の動物に襲われて食われる時代になってしまったのだ(中略)私が漁をしてきたロブスターも、今や歌い踊っている」。展示されているのは、アメリカ製のロブスターおもちゃ。人が通ると突然立ち上がり、ロックンロールを歌い踊る。

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「漁師」のコーナーより

  政治家の最後。「(中略)国民全員の幸福より、全員の薄い不幸のほうがましだったのだろう(中略)私は幸福を求めすぎて、絶滅を呼んでしまった。私の遺伝子などは、暗殺された方がましだ」。

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「政治家」のコーナーより

 記者会見にて展覧会について杉本氏は次のように語ります。「世界の終末に魅せられる。自身が体で感じる、世界が悪化している事態を表した。このような状況に困ったと感じる反面、美しく消えたいという願望もある。滅びの美学、儚く朽ちる美しさを映しました。」

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質疑応答に応える杉本氏。

  「ロスト・ヒューマン展」は、海景に始まり、海景に終わります。同じ表情をした海景。。。しかし、始めは、人類が出現する前の静かな海。終わりは、人類が滅亡した後の静かな海。
 「太陽系創成46億年のうち、人類の文明は7千年ほど。人間は地球環境に必要だったのか?なぜ出てきたのか?滅ぶなら滅べばいい。諸行無常、いかに美しく死ぬかが重要なのだ。」杉本氏の言葉より。

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〈海景〉ガリラヤ海、ゴラン1992 ゼラチン・シルバー・プリント©Sugimoto Studio

 <廃墟劇場>

 今回世界初公開の新作「廃墟劇場」は、1970年代から制作しているシリーズ「劇場」が発展したものです。アメリカ各地の廃墟と化した映画館を探し出し、スクリーンを貼り直し、杉本氏自ら世界の終わりを主眼に選んだ映画を投影。作品1本分の光量で露光した作品。
 選ばれた映画は、スタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情』、黒澤明の『羅生門』、ロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』など。それらが上映された場末の映画館に白く発光するスクリーン。。。その映画のストーリーをシンクロさせながら、独自の廃墟劇場を夢想してみては?
 

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《パラマウント・シアター、ニューアーク》(スタンリー・クレーマー『渚にて』1959)2015年、ゼラチン・シルバー・プリント ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 <仏の海>

 京都妙法院三十三間堂の千体仏を撮影した作品が《仏の海》。平安末期後白河法皇の御堂として平清盛によって建立されたこの建物には、末法の世に西方浄土を出現させたいという思いが秘められているといいます。「三十三間堂の千体仏を、再びこの世で創建時の理想的な光で見てみたい」という願いから杉本氏は、7年にも及ぶ撮影許可の交渉の末それを実現させました。早朝、差し込む光に来迎図を見たという杉本氏がとらえた仏の海に、私達は、救われて会場を後にすることができることでしょう!

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≪仏の海≫展示風景

 【展覧会開催概要】
会場:東京都写真美術館2階・3階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
会期:9月3日~11月13日
時間:10:00~18:00
※木、金曜日は20:00まで※入館は閉館の30分前まで
料金:一般1,000円、学生800円、中高生・65歳以上700円
休館日:月曜日(ただし9月19日、10月10日は開館し、9月20日、10月11日は休館)

【アートデート会話】
映画「Mr.&Mrs.スミス」を参考に。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーというセクシーコンビ。お互いにプロの暗殺者として別々の組織の元で活動していることを秘密にして結婚していたMr.&Mrs.スミスは、その結婚がお互いにも組織にもバレ、組織から命を狙われる。周囲を暗殺部隊に囲まれて絶体絶命の窮地に陥ったMr.&Mrs.スミスの会話。
 

    Mr.スミス「ラパスのボートに居るほうがよっぽどいいな。。。」
    Mrs.スミス「どこか違う場所に居たいなんて思わない。
                             今ここで、あなたと居たいの」
    
 

⇒デート応用編。
 女性「世界滅亡の日、どこに居たい?」
 あなた「どこにいてもいいんだ。君と居たい」
 

 それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを!

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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