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紳士のたしなみ

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「没後70年 吉田博展」開催中

これが版画なのかと、目を凝らしてじっと見た。版画というと平面的なものを想像するが、吉田博の版画からは空気感が伝わってくる。質感があり遠近感がある。そしてこの微妙な色彩は何なのだろう。絵画のような版画である

東京都美術館で「没後70年 吉田博展」が開催中だ。

若いころから油彩画、水彩画で才能豊かだった彼は、40代になってから新たに木版画に挑戦し、世界中で愛されるようになっていった。時とともに変化する大気、光のうつろい、水の流れ、それらが作品から伝わってくる。表現のために版画技法を探求し、独創的な色彩で雄大な自然や風景を描いていった。会場で流れる映像の中で「材質、趣、遠近感、透明感がある」と、孫で版画家の吉田司が話す言葉が印象的である。

「日本アルプス十二題 劔山の朝」1926年 個人蔵

吉田博は福岡県久留米市で生まれ、子供のころから絵の才能にたけていたため14歳で図画の教師の養子になる。絵の英才教育を受け、さまざまな出会いの中、23歳のとき命がけで渡米し大成功を収めた。そこで稼ぎ出した費用でヨーロッパへ渡航し、各地を旅する。その後も世界各国をまわり水彩、油彩で活躍する。

木版画と出会ったのは44歳の時。版元渡邊庄三郎のもとで「明治神宮の神苑」の下絵を手掛けた。明治神宮の完成を記念する募金者へのプレゼントが最初の作品となり、その後、渡邊版で7点制作した。関東大震災の後、仲間を救うため作品を抱えて渡米したが売れたのは渡邊版で預かった焼け残った木版画ばかり。そこで世界の木版画人気を知り、自らが版元になって思うままに制作してみようと49歳の時に彫師と摺師を雇って自ら版元となる。常に世界で勝負することを考え、いまもなお高い評価を得ている私家版の版画は250点ほどにもなっている。彼の作品はイギリスのダイアナ妃や精神科医フロイトに愛され、ノラ・ジョーンズがインドシリーズを収集するなど、根強い人気を誇っている。

「瀬戸内海集 帆船」シリーズは全部で5点展示されている。これは左から朝、午前、午後。いずれも1926年 個人蔵

「帆船」シリーズでは同じ版木で摺色をかえて様々な時間を描いている。朝、午前、午後、霧、夕、夜。同じ版木を使っていてもまったく違った作品のようだ。複雑な色彩表現を実現するために摺数は平均30数回にもわたり、「陽明門」という作品では96回も摺っている。色彩のグラデーションが美しく、同じ場所で時間の変化によって起こる表情を見せてくれる。

吉田の版画はアメリカ、ヨーロッパ、アジアと海外を回り、そして富士山、日本アルプスはすべて登り、穏やかな瀬戸内海など自ら現地で写生したものをもとに制作しているが、その見事な写生帖も展示されている。

「日本人にしか描けない洋画」を極めた吉田博の版画が一堂に集められ、その世界を堪能させてくれる。

 

没後70年 吉田博展1月26日(火)~3月28日(日) 東京都美術館 *会期中、一部展示替えあり。

*2021年2月24日現在の情報です *写真・記事の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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