Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのお出かけエンタテインメント

パナソニック汐留美術館「香りの器 高砂コレクション 展」

ボヘミアン・ガラスの香水瓶  高砂コレクション

日本最大の総合香料メーカー「高砂香料」が収集する香りにまつわる品、約230点の展覧会が開かれている。古代エジプトの香油瓶から、古代ローマンガラス、マイセンなどの陶磁器、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、香合、香炉、香道具と日本のものも含めて、20世紀にいたるまで幅広く展示されている。

「高砂香料」は水戸徳川家伝来と言われる「梅松蒔絵十種香箱」を譲り受けたことがきっかけで収集を始めたという。

香りは感情や記憶をよびさまし、私たちの日常は香りに満ちあふれている。私は特に美味しいものの香りがたまらなく好きだけど(笑)、魅惑的な香りや癒される香りにも魅かれ、一時はアロマ教室にも通っていた。時に、エレガントな特別な香りは人を高揚させ、胸をときめかせる。さらに香水瓶はロマンにあふれ見飽きることはない。

香りの歴史は古く、紀元前3000年までさかのぼる。古代メソポタミアやエジプトで宗教的な儀式のときに使われたのが起源だと言われている。古代ローマでは、技術革新で器のデザインが多様化し、ファッションとしてエレガントな携帯用の小瓶を持つようになり、19世紀末から20世紀初頭にかけてはアール・ヌーヴォー、アール・デコの作家であるガレドーム兄弟のデザインのものもある。彼らの作品は、その場を立ち去りがたいほどだ。20世紀には香水メーカーがルネ・ラリックなど作家に依頼するようになる。まさに芸術品と言えよう。

手前はルネ・ラリック香水瓶「ユーカリ」 高砂コレクション

また、驚いたのは、日本の香りの文化の奥深さである。

日本では仏教が伝来した6世紀以降に香りを使い始めたが、香道に見られるように独自の発展を見せた。香りを焚き、香りをきく、風雅なたしなみとして生活に浸透した。

展示されている、衣服に香を焚きしめるための道具や、伽羅枕と言う寝ている間に髪に香を焚きしめる枕まであった。まさに源氏物語の世界である。その奥ゆかしさや、優雅さを、改めて感じずにはいられない。

若松梅枝蒔絵十種香箱 高砂コレクション

そうだ、日本にはこういう文化があったんだ。アロマポットで精油を焚くのも良いけれど、日本の文化も取り戻さなくては。今日は、お香を焚いてみようか。

パナソニック汐留美術館 「香りの器 高砂コレクション 展」 2021年1月9日(土)~3月21日(日)公式HPをご確認ください。

*2021年1月17日現在の情報です*記事・写真の転載を禁じます。

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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