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新国立劇場オペラ「オルフェオとエウリディ―チェ」

新制作のオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」は、今、注目のバロック音楽のスペシャリスト鈴木優人の指揮、演出は勅使川原三郎で上演された(2022年5月19日、21日、22日)。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

勅使川原は、ダンサーで振付家でオペラ演出家で、出演、美術、照明、衣裳など、さまざまな才能をあわせ持つ天才だ。彼の世界が、どこまで表現されるのだろうか。

さらにそこに、ハンブルク・バレエ団のプリンシパルでジョン・ノイマイヤーの至宝アレクサンドル・リアブコが加わり、歌手は、新国立劇場初登場の世界のカウンターテナー、ローレンス・ザッゾ(オルフェオ)と大柄な美女ヴァルダ・ウィルソン(エウリディーチェ)。

これは大野和士オペラ芸術監督が重点を置くバロック・オペラのシリーズ第一弾。バロック・オペラと言うのは、17世紀初頭から18世紀半ばの時代のもので、この作品を書いたグルックはヘンデルやバッハの子供世代の作曲家だ。

美しいチラシで、見る前から膨れ上がった私の期待感は、見た後は気持ちの良い充実感でいっぱいになった。実に美しい舞台だった。とりわけ、舞台美術が素晴らしい。シンプルかつエレガントで、照明も雄弁に物語を語り、衣裳も美しく勅使川原の美意識が、細部にゆきわたっている。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

舞台で、存在感を放つのは、プリンシパルのアレクサンドル・リアブコ。彼にとって勅使川原作品は、今回が2回目だ。リアブコは語る。勅使川原は、ダンサーの中に、音楽や体の動きを通して自分の中にある芯の感情を見つけ出すことを求める。だからこそ、常に新しいものが生まれ続ける不確実性が醍醐味だと。

歌手は役を演じ、ダンサーはその場の空気、ムード、感情、目に見えないすべてを伝えているように感じた。光を放つリアブコの世界屈指のダンスを見ていると、力強く、しなやかで、あまりの美しさに目が離せなくなる。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

オルフェオを演じたローレンス・ザッゾは、カウンターテナーだ。このオペラがつくられた当時はカストラートが歌っていた。カストラートの哀しみに満ちた声は、オルフェオが愛する妻を失った心理状態に重なるに違いない。

この物語を知らない人はいないだろう。ギリシャ神話のオルフェウスの話だ。夫は亡くなった新妻を、困難を乗り超えて冥界に迎えに行き、決して振り返ってはならないと言われているのに振り返ってしまう。

その結果、ギリシャ神話での結末は悲劇だが、このグルックの作品はハッピーエンドで描かれている。

オペラが好きな人、ダンスが好きな人、鈴木マエストロが好きな人、勅使川原ファン、美しいものが好きな人、多くの人たちが満足できたに違いない。

最後に、プリンシパルのアレクサンドル・リアブコは、ウクライナ出身だ。彼の家族は、現在、ウクライナを脱出しハンブルクに避難してきている。そういう今だからこそ「愛を探さなくてはいけないし、愛を信じなくてはいけない。愛が人生には必要だから」と語っている。

世界中の人が、この舞台の百合の花のように、純真無垢で穢れがなければいいのに。互いが互いを愛せる日が速く訪れますように、願ってやまない。

新国立劇場HPはコチラ

*2022年5月22日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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