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紳士のたしなみ

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METライブビューイングで、オペラ「ばらの騎士」堪能する

オペラを映画館で楽しむMETライブビューイング。

今、上映中のオペラ「ばらの騎士」は、NYの観客の熱い感動が日本にまで伝わってきます。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

 

「ばらの騎士」の物語は、前回書きましたが、年下の愛しい恋人を手放す元帥夫人(ルネ・フレミング)の、気高く美しいこと。毅然とした中に、心の奥に哀しみを秘め、なんと気品があるのでしょう。その想いを想像するだけで、涙がこぼれ落ちます。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

そして、彼女の若い恋人オクタヴィアン(エリーナ・ガランチャ)の、ハツラツとした動き。激しく動くからと2ヵ月筋トレをして鍛えたふくらはぎがたくましく、あのカルメンを演じた妖艶な女性とは思えません。

 

ルネ・フレミングもエリーナ・ガランチャも、長年唱ってきたこの当たり役を、今回で卒業すると決めた最後のステージです。

その、多くの思いをのせて行われた舞台に、NYのメトロポリタン歌劇場(MET)の温かいファンたちは、惜しみなく拍手を送りました。METの劇場中が愛とやさしさに包まれていました。

 

2017年6月12日(月)。東京・東劇で開催されたトーク付き上映会には、トークも聴いて、ライブビューイングも観てしまおうという日本のファンが大勢駆けつけていました。

(c)松竹

音楽ジャーナリストで評論家の林田直樹さんとオペラ歌手森谷真理さんの対談は密度が濃く、とても興味深いものでした。この7月に二期会の公演で元帥夫人役を演じる森谷さんに、「超高音であるコロラトゥーラの難しさ」を問うと「意味を持たせることが重要」と音の美しさだけでなく、成熟と、老いの恐れや時の移ろい、愛情を表現することが大切だと話していました。また、実際にMETの舞台に立った時の楽屋裏の雰囲気を聞くと「世界最大級の劇場で迷子になった時に、道を教えてくれる人がたくさんいるので人数が多いのは助かる」とフランクに答えていました。

「ばらの騎士」という作品の魅力をたっぷり聞いてからの、上映です。

ルネ・フレミングも、エリーナ・ガランチャも、これ以上ないほどの完成度ですが、特に絶対に聞きのがしたくないのが第2幕「ばらの献呈」。エリーナ・ガランチャとゾフィ役のエリン・モーリーの二重唱は天にも昇る美しさです。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

 

さらに、オックス男爵(ギュンター・グロイスベック)がいやらしくて、品がなく、最高にヤな男爵を汗だくになって熱演。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

そして特別出演のイタリア人歌手役のマシュー・ボレンザーニの圧倒的歌唱力。パワフルでありながら甘く切ない歌声は、たまりません。

 

喜劇のはずなのに、あまりに元帥夫人の印象が強く、心が悲しさでいっぱいになります。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

それは、私がゾフィよりも元帥夫人の気持ちに近いからなの? あぁ、それもまた哀しい・・(笑)。

今日を含めて、あと6回のチャンス。

見逃さないで!

 

 

R・シュトラウス「ばらの騎士」新演出

東劇 東京都中央区築地4-1-1東劇ビル3F

電話:03-3541-2711  2017年6月16日(金)まで 4時間24分(10分休憩2回)

一般3600円、学生2500円

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

https://cross-over.sakura.ne.jp/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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