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紳士のたしなみ

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6月2日に再開した渋谷区立松濤美術館 「真珠―海からの贈りもの」~9月22日

コロナの影響で臨時休館していた美術館の多くが、様々な対策を取りながら開館し始めています。渋谷区の松濤美術館は、現在「真珠―海からの贈もの」展を開催中。会期が延長され9月22日まで。状況に応じて変更、中止になる可能性もありますので、最新情報はHPなどでご確認の上お出かけください。

《パール、エナメル、サファイア&ダイヤモンドネックレス》 カルロ・ジュリアーノ 1880年頃 イギリス 穐葉アンティークジュウリー美術館

 

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、館内の人数は最大50人に制限し、大人4人以上まとまっての入館はご遠慮いいただき、入館前に氏名、連絡先の記入や、マスクの着用、手指の消毒をお願いしています。また館内が過密と判断された場合は、一時入館制限などがされることもありますのでご注意ください。

さて、今回の「真珠―海からの贈もの」展は、古代から近代にいたるまでの英国をはじめとするヨーロッパで製作された天然真珠を使った装身具が展示されています。洗練されたデザイン、精緻な細工、いくら見ても見飽きません。小ぶりな美術館のため展示点数は多くはありませんが、その分、じっくりご覧いただけます。

私たち日本人にとって、身近な真珠はミキモトの養殖真珠だと思うのですが、実は真珠というのは世界最古の宝石のひとつで、紀元前6000年ごろから愛されてきたと言われています。

自然に貝の中に生まれ、美しい輝きを放つ宝石は、古代の中東で珍重されたことがシュメール、アッシリア、ササン朝などの遺跡から発掘されたことからわかります。

まずは、展覧会冒頭の、古代オリエント博物館からのパルティア朝の「真珠付き金製耳飾り」に目が釘付けになります。いまも十分通用するこのピアスのデザイン。なんて可愛らしいんでしょう。

《真珠付き金製耳飾り》 1-3世紀 シリア 古代オリエント博物館

15世紀末になるとコロンブスの新大陸発見や東方の貿易ルートの確立から、それまでのオリエント産のみならず、より光沢のあるベネズエラ産などが手に入るようになり、装身具としてもてはやされるようになり発展していきます。

真珠は、王侯貴族にとって富と権力の象徴であり、キリスト教における純潔のシンボルとして16世紀には黄金期を迎え、17、18世紀になると男性から女性たちがおしゃれを楽しむものとなります。

1700年頃のモーニングスライド(ハート)は、楕円形とハート型のロケットをつないだブローチです。

《モーニングスライド「ハート」》1700年頃 イギリス ミキモト真珠島 真珠博物館

18世紀後半から人気を博したのは、芥子の実ほどの大きさの「シードパール」や半球状の真珠「ハーフパール」。これらの細工は、別格の美しさを放っています。20世紀初頭には残念ながら使われなくなってしまいました。

ティアラは、真珠の母貝を台座にし、白い馬の毛やテグスを使ってくみ上げられた素晴らしい造形です。

《シードパールティアラ》 19世紀初期 イギリス 穐葉アンティークジュウリー美術館

個人の感情や思い出を表現したセンチメンタルジュエリーと呼ばれたものも大流行しました。その中でも、故人をしのんで喪中の間につける「モーニングジュエリー」というものがあります。遺髪が模様のようにデザインされておさめられ、涙を象徴するとされた真珠で周りを囲み、哀しみと愛情がつたわってきます。

《ハーフパール、ヘアー&ゴールドペンダント》1813年 イギリス 穐葉アンティークジュウリー美術館

この他、1893年に世界で初めて御木本幸吉が真珠の養殖に成功し、真珠王になっていく歴史も紐解かれています。それまで日本では、真珠を装身具にして身につける文化がほとんどなかったにもかかわらず、なぜ真珠を養殖し、装身具の素材にしようと思い立ったのか。その先見性には目を見張るばかりです。

 おこもり生活が続き、マスクが日常になると、なかなかおしゃれをしたい気持ちになりませんが、目の保養をしたら、おしゃれ心が戻ってきました。アクセサリーをつけてドレスアップして出かけられる日が来ますように。心から願っています。

 

渋谷区立松濤美術館「真珠―海からの贈もの」 6月2日(火)~9月22日(火・祝) 開館時間などは、HPをご確認の上おでかけください。

 

*2020年7月19日現在の情報です*記事、写真の転載を禁じます。

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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