Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのお出かけエンタテインメント

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』を語る 串田和美さん

前回(2017年9月22日)、NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』の記事を書きましたが、この舞台の演出家であり映画の監督もされた串田和美さんに、お話を伺いました。

 

今回は、歌舞伎の舞台を映画で楽しむ「シネマ歌舞伎」の新バージョンということで、カメラの置き方も、舞台の袖に据え置くなどあらゆる角度から3公演分、延べ約20台のカメラを駆使して撮影しました。

また、上演時間も舞台そのものは約3時間ですが、映画ですから2時間ほどに縮め、(映像ならではの演出として)シーンの順序を入れ替えることもしました。

 

「舞台を観た感じとは、また違う印象で、もっと抽象的で感覚的なものが増えたかもしれない」とお話しされるように、私の心にそのまま「混沌」というイメージが飛び込んできます。

 

(c)明緒

「鶴屋南北の『四谷怪談』は群集劇で、色々な人が出てきます。江戸末期、階級制度が崩壊しつつあり、社会の上下が逆になったり、思っていたことと正反対なことが起きたり、これまで正しいと思われていた価値観が全く分からなくなるぞという予感めいたものが漂っていた時代です。平和な江戸が続いて、これからとんでもない事が起こるという直感がありました。それは現代と同じで、人間が予測できないことに包まれてるという感覚を、面白いなぁと楽しんで編集しました」。

 

スーツを着たサラリーマンが、アタッシュケースを持って伊右衛門たちの横をすり抜けていくのには目が釘づけになります。

(c)明緒

 

「サラリーマンは黒衣(歌舞伎などで、舞台上で小道具を渡したり俳優の衣裳の着替えを手伝う役どころ。全身黒の衣裳を身に着け、見えていないということになっている。)であり空気感であり、我々の見慣れたものですね。歌舞伎の黒衣って、初めての人にとっては目立つんですが、歌舞伎を見慣れている人にとっては何でもありません。いないものとして扱われていますが、絶対にいるわけじゃないですか。支配しているような、助けているような存在です」。

また、様々な時代の人が、同じ舞台の上に登場していることについては

「結局、時代というのは色々な人の積み重ねで成り立っているんだなと思っていて、見えない人たちが綿々とつながり、時空がつながっている。それに、現代社会も怪談なんだよね。もしかしたら今もお岩の気配が生きているかもしれないし、四谷怪談というものの不安とか、得体のしれない時代というのはしょっちゅうあって、今と同じだなと。江戸時代にもサラリーマンみたいな人もいたんだろうなと思うわけです」。

(c)明緒

 

さらに、お岩に辛く当たる伊右衛門に「いじめたくないのに、大好きなのによけいいじめちゃったりするのは、誰にでもありえるじゃないですか。どうしていいかわからない、何だか気に入らない感情で行動してしまうことは、可愛そうでもあるし、どうしようもないものです。だから伊右衛門という人物は、悪いんだけど切ない。いい人でいることって、ゆとりがないとできないことかもしれない。そんな南北の無意識の感性を探し出して見せたい」と考えているそうです。

「面白くなるかならないかが大事」という串田さん。私たちがとらわれていないつもりが、いつの間にかとらわれている枠や、常識に「待った」をかけます。

 

「よく、どうやって観たらいいんですかと聞かれるんですが、間違いというのはなくて、作る人と観る人の感じ方は違っていていいわけで、既成概念にとらわれないで、自分なりの見方を探してほしいと思います。人に合わせないのが男らしさです(笑)。男性にももっとお芝居を見てほしいですね」。

何が正しいとか、間違っているというのはなく、自分の目で見て感じていいのだと教えてもらって、何だか気が楽になりました。

「自由に生きろ」という串田さんの「紳士の哲学」。それはそれは、深いものでした。

 

NEW シネマ歌舞伎『四谷怪談』

2017年9月30日~

全国、57館の劇場で公開されます。

詳細はコチラ

HP: http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/35/

 

 *2017年9月28日現在の情報です。*記事・写真の無断転載を禁じます。

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

https://cross-over.sakura.ne.jp/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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