Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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新国立劇場オペラ 初上演『夢遊病の女』

ベルカント・オペラ(19世紀前半の作曲家ロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニの時代のオペラで声の美しさが際立つ作品)を代表するベッリーニの『夢遊病の女』が、新国立劇場で初めて上演されています。このプロダクションは2022年、テアトロ・レアル、バルセロナ・リセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場との共同制作で、マドリードで初演されました。

演出はバルバラ・リュック。ダンサーが主人公の心の内を踊り、モダンで斬新な演出を観客はどう受け止めるでしょうか。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

指揮は、イタリアオペラの名匠マウリツィオ・ベリーニイタリア感満載で、ベルカント・オペラの真髄を見せてくれます。マウリツィオ・ベリーニマエストロは言います「メロディーと、流れるようなライン(旋律)の声に身をゆだねてください」。「声の色合い、表現力、個性のある演じ手が揃えば、その瞬間の雰囲気とドラマ性を作り上げることができる」と。声の美しさが主役のオペラなんだと知りました。

アミ―ナ役に新国立劇場初登場のイタリア出身の若手クラウディア・ムスキオ。シュトゥットガルト州立劇場の専属歌手として2024年7月にアミーナ役でデビューしています。正確なテクニック、演技力、それに若く清純で可憐なアミ―ナという役柄にピッタリです。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

エルヴィーノには、世界で活躍する大スター、アントニーノ・シラグーザ。新婚の夫の役ですが、実は、東京公演中に還暦の誕生日を迎えました。声はもちろんのこと、動きも軽快で若々しく演じます。そしてロドルフォ伯爵役には人気の妻屋秀和。ベルカントの声に仕上げてきました。さらに、もう一つ大切な役割を果たすのが、合唱団。緻密に、静謐に、村人たちの心情を歌い舞台を盛り上げました。

ベルカント歌手というのはバロックと古典主義から受け継がれてきた高度な技術やコロラトゥーラ(メロディを細かい装飾で飾る)、レガート唱法(メロディラインを息で支えて、音色や音量などに変化をつける表現方法)を身に着けています。彼らのために曲が書かれている。ということは、その技量がなければ歌えません。クラウディア・ムスキオもアントニーノ・シラグーザもたっぷりと聴かせてくれました。

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水車小屋を営むテレーザに育てられた孤児のアミ―ナ。可愛らしく皆の憧れの彼女は裕福なエルヴィーノと結婚することが決まっている。幕が上がると、音楽が始まる前にアミ―ナの孤独と不安をダンサーたちが踊る。スタートする曲は婚礼のための華やかな音楽。しかし、目の前で繰り広げられているのは暗く陰鬱な印象。少しも幸せそうにはみえない。ただ、アミ―ナは本当にエルヴィーノを愛しているのだ。エルヴィーノは愛するがあまり嫉妬深い。翌日に教会での結婚を約束したその晩、アミ―ナは夢遊病のため領主のロドルフォ伯爵の部屋に入って寝いってしまう。それを知ったエルヴィーノは、不貞を働いたと激怒。婚約を解消して元の恋人リーザと結婚しようとする。そこに領主が現れ、誤解しないようにというのだが、エルヴィーノは信じない。その時、水車小屋の上に眠ったままのアミ―ナが登場する。

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撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

「オペラはイタリア文化の一部」と語るマエストロ。ベルカント・オペラとは、こういうものなのかと改めて知ることができました。

この公演、10月9日(水)14:00、10月12日(土)14:00、10月14日(月・祝)13:00と続きます。新国立劇場のHPはコチラ

 

*2024年10月7日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
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だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

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