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日本初の原語上演 オペラ「ウィリアム・テル」新国立劇場の新制作です

作曲家ロッシーニの作品と言えば、オペラブッファと言われるコミカルな「セビリアの理髪師」や「チェネレントラ」がよく上演されますが、オペラ「ウィリアム・テル」も、ロッシーニ最後の最高傑作のオペラとして知られています。新国立劇場初上演、原語(フランス語)による舞台上演では日本初演。2024年11月20日に幕を開けました。上演時間4時間40分(30分の休憩2回含む)全4幕です。

原作はドイツの詩人・劇作家のフリードリヒ・シラーの戯曲「ヴィルヘルム・テル」(1803年)で、スイス建国の伝説の英雄ウィリアム・テルをめぐる物語。舞台はスイス。圧政に苦しむ民衆が、自由を求めて闘います。

この物語を歌劇にしたのがロッシーニです。彼は18歳でオペラの作曲家となり、爽やかで生き生きとしたリズムや、コロラトゥーラを駆使した華麗な歌唱を用い一世を風靡しました。この「ウィリアム・テル」は、オペラ座のためにフランス語の作品として書いた初期のグランドオペラです。グランドオペラとは上演時間が長く、歴史的な事件にもとづき、登場人物が多く、一流歌手がたくさん出演し、合唱団も大人数で、オーケストラも大掛かりな編成であり、バレエがあり、舞台美術が立派で華やかなことが特徴ですから、当然、上演するのも容易ではありません。

今回、新制作された「ウィリアム・テル」も、名匠ヤニス・コッコスの美しい舞台美術を背景に、重厚な合唱や華やかなバレエシーンがふんだんに織り込まれ、ソロ歌手たちの力量も見事で、めったに見られないグランドオペラとなりました。「ウィリアム・テル」の、リンゴを射落とすシーンが一体どのあたりに出てくるのか、つい待ち構えてしまいます。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

演出は、前述した演出家・舞台美術家として名高いヤニス・コッコス。新国立劇場では「夜鳴きうぐいす/イオランタ」を手がけました。今回の舞台は、ほとんど森の中です。彼は、常に時代を超越し、状況や人物が近く感じられるように演出しています。指揮は大野和士。5人のチェロ独奏のアンサンブルで始まる序曲に心をつかまれ、観客はそのまま舞台へと引き込まれていきます。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

ウィリアム・テルには、この役を当たり役にしているゲジム・ミシュケタ。新国立劇場では2022年の「椿姫」でジェルモンを演じました。アルノルドにルネ・バルベラ。2020年の「セルビアの理髪師」2021年「チェネレントラ」に登場しています。ルネ・バルベラの最初の第一声を聴いた時、こんなに素晴らしい高音が出るのか。なんと力強くなめらかなテノールなんだとしびれました。オーストリア皇女マティルドに世界のソプラノオルガ・ペレチャッコ。気品があり美しい皇女役がピッタリです。新国立劇場では2017年「ルチア」以来の再登場です。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

そして、私の推しはウィリアム・テルの息子ジェミの安井陽子とテルの妻エドヴィージュの齊藤純子。合唱団の重層的な響きの中から2人の声がさえ渡ります。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

有名なトランペットのファンファーレが聴こえてくれば、もうそこは「ウィリアム・テル」の世界。大野和士マエストロの情熱的な指揮に牽引され、最後のクライマックスで「なるほど、そうきたか」とうなずかされます。

 

新国立劇場新制作 オペラ「ウィリアム・テル」2024年11月20日(水)~11月30日(土) HPはコチラ
*2024年11月20日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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