Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのお出かけエンタテインメント

「東京・春・音楽祭」巨匠リッカルド・ムーティのヴェルディ愛

上野で、東京の春の訪れを音楽で祝うクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭」は、2005年に始まり今年20周年を迎えました。3月中旬から4月21日(日)まで、オペラやオーケストラ、国内外の一流アーティストたちの演奏会や、街角での音楽があふれます。一度訪れたら、もうやみつきになること間違いありません。

「はじめの思いを忘れず、なによりも、その意志を持ち続けること、それだけが、音楽祭に大きな未来をもたらすのだ」と語ったのは、2年目の音楽祭に出演したマエストロ リッカルド・ムーティ

そのムーティの、演奏会形式オペラ「アイーダ」は、まるでイタリアそのもの。うねりがあり、繊細で、情熱的でギュッとイタリアが凝縮されています。ヴェルディを聴くなら、元ミラノ・スカラ座音楽監督で、ヴェルディの研究者でもある造詣深いムーティをぜひ一度は聴きたいと思っていましたが、その願いが叶いました。

会場はムーティファンで溢れ、舞台に登場した瞬間から「ブラボー!」の声が響きます。

(C)平館平/東京・春・音楽祭2024

マエストロが「最も愛すべき作曲家」と語るヴェルディ。イタリアの男であり、イタリア人が人生を共にする音楽家だという、熱い思いが込められた演奏は・・。

「アイーダ」は、エジプトで奴隷となっているエチオピアの王女アイーダと、エジプトの将軍ラダメスとエジプトの王女アムネリスの三角関係の物語です。

ラダメスはアイーダを王女と知らず愛し、アムネリスはラダメスを愛しているため、アイーダとの関係に嫉妬の炎を燃やします。ラダメスが戦いに勝ち、連れてきた捕虜の中に身分を隠したアイーダの父、エチオピアの王がいました。ラダメスと娘が恋仲なのを知り、王は、娘に情報を聞き出すように迫ります。そしてラダメスは裏切り者としてとらえられてしまうのでした。

 

何といってもオーケストラが素晴らしかった。ダイナミックでありながら細やかで、「東京・春・音楽祭 ばんざーい」と叫びたくなりました。

この公演のために特別に日本の若手で構成されている「東京春祭オーケストラ」は、普段は一緒に舞台に乗らないメンバーです。第一ヴァイオリンにN響のコンサートマスター郷古廉さん。

ムーティマエストロの想いを込めて若手育成を兼ねていますので、集中力が違います。

(C)池上直哉/東京・春・音楽祭2024

第2幕第2場「凱旋行進曲」は、日本的に言うと「待ってました!」と声をかけたい場面です。これを聴きたくて「アイーダ」を聴きに来ている方もいらっしゃるかも。あまりに重層的で高貴な合唱に、「私も死ぬまでに一度でいいからこの合唱を歌ってみたい」と願いました。オペラの舞台の時は、象が歩いたりする絢爛豪華なシーンになりますが、演奏会形式で、音楽の力で十分に厳かさが伝わってきます。細い「アイーダ・トランペット」もよかったですね。4人ずつ舞台のはじに配置され、音色がホールをかけめぐりました。

(C)池上直哉 / 東京・春・音楽祭2024

若手音楽家の育成に熱心なマエストロは、演奏終了時にオーケストラの面々に、「よくやった」「よかったよ」という感じで肩をたたいて舞台袖に入っていきました。

(C)池上直哉/東京・春・音楽祭2024

マエストロは、楽譜に忠実に演奏することを心がけ「偉大な作曲家たちが楽譜の中の一音、一休符にこめた想いや精神、それが音楽の力です。音楽が持つ素晴らしい力を、時代も国も越えて人々に伝えていくこと、これが使命だ」と語っています。

ウィーン・フィルに伴って初来日したのが1975年。正しい演奏の先にある真実を、若い世代に伝えたいと2015年に若い指揮者と歌手を育てる「イタリア・オペラ・アカデミー」を創設しました。これまでは、音楽祭期間中に開催していましたが、今年は秋に「アッティラ」をとりあげます。アカデミー開催スケジュールの詳細や、指揮受講生、アカデミー聴講の募集・聴講料、公演チケットに関しては、公式HPをご確認ください。イタリアオペラの真髄をもっと見せていただきたい。

東京・春・音楽祭2024」2024年3月15日~4月21日(閉幕しています)

*2024年4月22日現在の情報です。*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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