Taste of the gentleman

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はじまりました。教えて、ブルーアイランド先生!「新国立劇場で学ぶ神話・伝説の世界―ギリシア」第1回

音楽家青島広志先生のレクチャーイベント「神話・伝説の世界―ギリシア」第1回目がいよいよ始まりました。2025年10月5日は「カオスの形成からティターン神族」。「オリンポスの12神」以前の、古い時代の神様の話です。

歌手にソプラノ赤星啓子さん、テノール小野勉さんを迎え、それぞれの神様に当てはめた曲を演奏したり歌ったりして話は進みます。神様にあった曲を探すのはどれほど大変だったでしょう。日本の歌、良く知っている曲、オペラなど、硬軟とりまぜながら聴かせてもらって、ギリシア神話の流れもわかり、幸せいっぱいな時間でした。

まずは、青島先生とギリシア神話の出会いは、習っていたピアノの先生のお宅に置いてあった少女漫画で読んだのがはじまりだとか。ギリシア神話は数が多く物語もきちんとできていています。ギリシア神話の大もとは「宇宙卵」というもので、そこにすべての種が入っていて、それをギリシア語で「カオス」と呼び、ここから色々なものが生まれました。ハイドン作曲「天地創造」の序曲「カオス」のピアノ演奏からスタートしました。

その「カオス」の中から最初に生まれたのが「エロス(愛)」すなわちキューピット。男の神様と女の神様を「カオス」から引き出し、夫婦にして神様を増やしていく力があり、また愛と美の女神、ヴィーナス(アフロディーテ)の子供としての役割もありました。オッフェンバック作曲のオペレッタでギリシア神話の集大成の曲「天国と地獄」の二幕より男の子が歌う『女をおびき寄せるには』を赤星さんが歌います。第一声から、最高潮の歌声です。歌の中に「チュッチュッ」とキスをする音が出てきて可愛い。

その後も盛りだくさんで「エロス(愛)」にまつわる神話の中に、今も伝わる物語の原型がたくさん入っていることや、次にカオスから出てきた「ガイア(大地)」と「ウラノス(天空)」が結婚し、彼らから「ポントス(海)」と「ニュクス(夜)」が生まれたこと。

「ガイア(大地)」は、日本で最も歌われている合唱曲「土の歌」というカンタータの最後の曲『大地讃頌』を二重唱で。「ウラノス(天空)」は、『空がこんなに青いとは』

「ポントス(海)」は『海』を参加者たちも一緒に気持ちよく合唱しました。「ニュクス(夜)」は一晩中踊りたいという歌「マイ・フェア・レディより『踊り明かそう』を寸劇付きで披露してくれました。

次の世代の神々は、ティターン神族です。天空の神ウラノスと大地の神ガイアの生んだ子供たちの中の一人に、きかん坊の「クロノス(時)」がいます。彼は母親から言われて父親のウラノスを去勢し、そこから絶世の美女アフロディーテが生まれます。クロノスはハイドンの交響曲第101番「時計」より第二楽章。クロノスは自分の兄弟の「レア(大女神)」と結婚します。レアのそばにはいつもライオンがいるため、曲は「11匹のネコ」より『体をきたえようソング』。

クロノスは、父親から「自分が親にしたことをお前も子供からやられる」と言われたため、怖くなって子供たちを次々にのみ込んでしまいます。それを悲しんだレアは、最後に産んだ子ゼウスを隠します。他にもこの時代には、平和主義のオケアノス(大洋)、ヘリオス(太陽)、エオス(暁)、セレネ(月)、オリオン(巨人)がいました。オケアノスは『浜辺の歌』、ヘリオスは『一月一日』、エオスは『オペラのアリア『セヴィリヤの理髪師』より『暁の空は微笑み』、セレネはイタリアのカンツオーネ「サンタ・ルチア」、オリオンは『冬の星座』を聴かせてくれました。

それぞれの神の誕生や、どんな神様かということ、関係性や血筋まで全体が網羅され体系的に理解できました。作曲家が題材にする神々や神話を知るだけでなく、「ウフィツィ美術館で見たボッティチェッリのヴィーナス(アフロディーテ)は、だから貝の上にいたのね」とか「プラド美術館のルーベンスの絵は、そういう意味があったんだ」とアートにも繋がりました。  

次回は、クロノスが追い出された後、現在も天にいると言われている「オリンポスの12神」のうち6人を取り上げます。

このレクチャーイベントは、構成の力が際立っています。何と言っても青島先生のひきだしの多さには感服です。無尽蔵の知識の中から神様に関連付けた曲を出し、その日登壇する歌手にあった曲を選曲。さらにそれを参加者が楽しめ、満足できるものであるように組み立てるエンタメ力。もちろん、ギリシア神話への造詣も深まります。あと5回ありますので、本当に楽しみです。

開催は、2025年11月9日(日)、12月14日(日)、2026年1月18日(日)、2月15日(日)、3月15日(日)11時から12時半 詳細はコチラからご覧ください。

*2025年10月15日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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