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紳士のたしなみ

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特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」 東京国立博物館 9月9日(火)~11月30日(日)

広報大使でもある俳優の高橋一生の音声ガイドが秀逸な特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」。東京国立博物館に鎮座する7軀の仏様と同じ空間に身を置くと、一瞬、俗世と離れて心が温かいもので満たされるような気がします。

奈良・興福寺のご本尊、国宝の弥勒如来坐像(みろくにょらいざぞう)と、今にも動き出しそうな両脇に控える国宝・(むじゃく)、世親菩薩立像(せしんぼさつりゅうぞう)が、東京国立博物館にやってきました。鎌倉時代を代表する仏師・運慶晩年の傑作です。

国宝 弥勒如来坐像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影:佐々木香輔

 

仏像が安置される興福寺の北円堂(ほくえんどう)は春と秋の特別開扉以外、普段は非公開ですが、弥勒如来坐像を後世に伝えるための維持・保存のための文化財修理が完成したのを記念して約60年ぶりに寺の外に出ました。

今回、この貴重な3軀に加えて、北円堂にかつて安置されていた可能性の高い四天王立像を合わせた7軀の国宝仏が一堂に展示されています。

国宝 四天王立像(多聞天)鎌倉時代・1 3世紀 奈良・興福寺蔵 中金堂安置

北円堂というのは、平城京造営の推進者・藤原不比等(ふひと)の追善供養のために立てられたお堂で2度の災禍にあい焼失しましたが、鎌倉時代に再建されました。いまでは、現存する興福寺のお堂の中で最も古く、建物そのものも国宝に指定されています。この時に造像したのが運慶一門です。

弥勒如来坐像は、木造で造られ、像内には弥勒菩薩立像、願文、これらを納めた厨子を前後で挟む板掘りの五重塔、宝筐院陀羅尼経、胸には仏の魂を現した心月輪という水晶珠を蓮台上に固定したものがあることがわかっています。今回はその存在をCTで確認しました。仏様もCTに入る時代です(笑)。

左から弥勒如来坐像、世親菩薩立像、無著菩薩立像 すべて奈良・興福寺蔵

また、台座内枠には運慶一門の仏師の名前が墨書きされているそうです。普段はお堂の中で光背を背負っていらっしゃるため、お背中を拝見することはできませんが、今回はぐるりと360度見ることができます。背中の筋肉のつき方や、頬の丸みなどを感じることができ、いかに彫刻としても素晴らしいものかがわかります。ちなみに今回の修理では、表面の漆箔層の剥落止めがほどこされました。

左から弥勒如来坐像、無著菩薩立像 、世親菩薩立像、すべて奈良・興福寺蔵

この弥勒如来坐像の目元は彫眼ですが、無、世親菩薩立像は玉眼です。釈迦入滅後約1000年を経たころ、北インドで活躍し法相教学を確立した実在の僧の兄弟で、こちらは人間というわけです。

国宝 無著菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置”撮影:佐々木香輔

国宝・四天王立像、持国(じこく)天像、増長(ぞうちょう)天像、広目(こうもく)天像、多聞(たもん)天像は、現在は中金堂に安置されています。

展示会場と言うのには畏れ多いような荘厳な空気が流れ、一瞬、別の次元に連れて行かれる。鎌倉時代の美を知るだけでなく、魂をも運ばれる貴重な空間です。

特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」東京国立博物館 本館特別5室 2025年9月9日(火)~11月30日(日)HPはコチラ

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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